Omizu

緑園の天使のOmizuのレビュー・感想・評価

緑園の天使(1945年製作の映画)
3.7
【第18回アカデミー賞 助演女優賞、編集賞受賞】
イーニッド・バグノルドによる小説の映画化。当時12歳のエリザベス・テイラーはこの作品によって子役スターとしてブレイクした。元子役スターのミッキー・ルーニーが相手役であるのも面白い。監督は同じくファミリームービーの名作『仔鹿物語』のクラレンス・ブラウン。アカデミー賞では監督賞他全5部門にノミネートされ、助演女優賞(アン・リヴィア)と編集賞を受賞した。

馬大好き少女のベルベット(エリザベス・テイラー)は放浪者のマイ(ミッキー・ルーニー)を家に住まわせる。近所の暴れ馬が安価で売りに出されくじびきで競売にかけられるとなんとベルベットが当たってしまう。その馬パイが競馬の素質を持っていると分かったベルベットとマイはロンドンの大会を目指すが…

現実問題そんなカンタンに行くのか?という展開が気にならなくもない。

ただやはり特筆すべきはエリザベス・テイラーの美貌だろう。これは人気になるという納得度の高い輝きがある。やや無理のある理屈でも彼女のキラキラな目にやられてしまう。

また助演女優賞を受賞した母親役のアン・リヴィア、どこかで観たと思ったら『紳士協定』だ!舞台からスタートしており、トニー賞も受賞している実力者。映画では『聖処女』(未見)にも出ており、3度の助演女優賞ノミネートの名脇役である。かなりゴツい怖い顔だが、「元海峡横断者」という設定に相応しい面構えであり存在感。

かくいう父役のドナルド・クリスプも『わが谷は緑なりき』で助演男優賞を受賞している演技派だがアン・リヴィアの前では…役としても尻に敷かれる旦那役なのでね。

非常に素直に感動できるいい話、ではあるかもしれない。終盤ベルベットは男装してレースに出て優勝するのだが、女性だとバレてしまう。「女性だから」という理由で失格、でもメディアによって英雄に祭り上げられ故郷に凱旋する。家に戻って愛馬パイと過ごす。これっていい話かな、という疑問が。そもそもパイを優勝させたくてロンドンまで行ったのに目的を果たしてないよね。まあ時代柄仕方ないとは思うけど。

またキャラクターの背景の描き込みが不十分。ミッキー・ルーニー演じるマイは作品で語られる以上のことがありそうなのにそこは深掘りしない。アン・リヴィア演じる母の「元海峡横断者」というのがすごく気になる。女性として大変だったと思うがその苦労、詳しい過去については語られない。あとそもそもなぜベルベットは馬がそんなに好きなのか。主観的な理由でいいから最初に語っておくべき。

素晴らしかったのは終盤の競馬のシーン!かなりじっくりと緊迫感を持ってみせていた。アナログの時代に下から、上から、横からと様々な角度から撮るのは大変だったと思うが違和感なく競馬に熱中できた。ベルベットとその馬をなんとか観客に分からせようと番号を映したり、騎手の衣装を他より目立つものにしたりと様々な工夫をしていた。エリザベス・テイラーが乗っているところは明らかに別撮り(たぶん背景に映像を流してテイラーが何かに乗って演技しているのかな)なのはご愛嬌。

描写が甘いなとは思うものの全体の暖かい演出はよかった。みせるところはちゃんとみせてくれてかなりいいバランスの作品じゃないかと思う。
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