半兵衛

怪盗ルパンの半兵衛のレビュー・感想・評価

怪盗ルパン(1957年製作の映画)
4.0
50年代の作品とは思えないクラシックな活劇スタイルの怪盗映画を、ベッケル監督は得意の編集テクニックと無駄のない語り口でフランス映画らしい上品さと活劇スタイルを生かした極上の娯楽映画に仕上げてしまった。

お話は荒唐無稽な盗みの物語ではあるが、盗みのテクニックを華麗にかつスマートにそしてちょっとコミカルに描いていて見ていて飽きない。あと冒頭のパーティーで暗闇のなかを盗んだ絵を持ちながら大勢の人を潜り抜ける場面など絵になるスタイリッシュな映像が随所に登場して活劇としての面白さを引き締める。

後半ロシア皇帝のやりとりはちょっと長めでだれるが、権力はあるものの生活のすべてを束縛された皇帝と自分の気分で盗んだり遊んだりするルパンを通して「本当の自由とはなんなのか?」というテーマが浮かび上がってきてこれはこれで味わいがある。そして自由に憧れる皇帝がルパンに出した挑戦状に対する答えが粋。

女絡みで正体がバレそうになったり、自分と対立するヒロインとちゃっかり懇ろになったりと孫を思わせる描写がいくつかあり思わずニヤリとする、そしてドジを踏んでもそこから逆転するのも孫みたいでカッコいい。

あと特筆すべきはラスト、普通の作家だったら10分くらいやりそうな盗みのシークエンスをたった1分にまとめてしまう超絶的な手腕に驚嘆してしまう。そこからの「FIN」の出し方も完璧。

でもこうした古きフランス映画スタイルが1957年というヒッチコックが活躍した時代に作られたことを考えると時代錯誤なところは否めず、このあとにヌーヴェルバーグが登場したことも含めて映画の時代の流れを痛感したりもする。

ルパンが操縦する車をはじめ、20世紀初頭に活躍したクラシックカーが活躍するのも見所。
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