あーさん

心の旅のあーさんのネタバレレビュー・内容・結末

心の旅(1991年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ずっと前に観て、再鑑賞したいと思っていた作品。
やっと、観れた。

ハリソン・フォードと言えば、アクションのイメージだけど、こういうしっとりした作品もイケるんだな、と思った覚えが。

主人公ヘンリー(ハリソン・フォード)は、NYのやり手弁護士。
冒頭の裁判シーンが、彼を象徴している。
非情であってもとにかく勝つことが彼の信条。
セレブな生活を妻サラ(アネット・ベニング)と一人娘レイチェル(ミッキー・アレン)と表向きは謳歌していた。

ある日、ヘンリーはタバコを買いに行った店で強盗に襲われ、頭を強く打ったことから身体機能と記憶を司る部分を損傷し、家族の事も自分のことさえも一切わからなくなる。
喋ることも歩くこともままならない状態からリハビリをするのは気が遠くなるような話で、ヘンリーは赤ちゃんになってしまったかのよう。

戸惑う家族やヘンリーを支えたのは、医師や看護師、そしてリハビリ・トレーナーのブラッドレー(ビル・ナン)だった。
ノリが良くて、明るいブラッドレーだったが、彼にもあることから好きなことを諦めざるを得なかった過去が。。
その事を知ってブラッドレーと打ち解け、前向きにリハビリを続けることで少しずつ身体や言語の機能を取り戻していくヘンリー。
失った記憶も妻や娘との交流するうちに、わずかずつだが思い出してゆく。
進んだり、止まったり、喜んだり、イライラしたり、揺れ動いたり、、まるでレンリーは子どもが成長していくように、家族の支えで色んなことを獲得していくのだったが、元のエリート弁護士に戻るには余りにもハードルが高過ぎた。。
一見親切な上司や同僚も、一皮剥けば自分をよく見せたいだけで、誰もヘンリーのことを心から迎えようとしている訳ではなかった。この辺りはシビアだなぁ。。

そこから彼がどのように再生していくかがこの物語の肝だけれど、後は観てのお楽しみ♪





↓ここからネタバレ、いつもの自分語り…




記憶を失くすということは、それまでの人生を失うということ。
それはマイナスのようであるけれど、新しく人生をやり直せるということでもある。
ヘンリーはエリート弁護士の地位は失ったが、家族との絆は取り戻し、生身の人間として人と温かい繋がりを持って生きていくことの大切さを知った。
事件の前のダブル不倫には驚いたが、夫婦がちゃんと向き合っていないとそうなるのかな。(本気で好きだったのにすっかり忘れられていたリンダの事が、ちょっと可哀想に思ってしまったけれど…何だかんだ言ってやっぱり妻は有利だ!)
娘のレイチェルとの関係も、常に上から目線だったヘンリーだが、事件後は対等に話せるようになった。図書館やジュースのシーンにはほっこりする♪
私も父とこんな関係でありたかったなぁ。
仕事人間で強過ぎる父親は、どうしても家族と距離ができてしまいがち。事件前のNYを肩で風を切って歩くヘンリーの姿は、同じようなトレンチコートを着て大阪の街を闊歩しながら仕事をしていた頃の父の姿と重なる。
病気で弱っていく父を見るのは辛いけれど、周りの人への気遣いができるようになったり、"ありがとう"と言う回数が多くなった父は、今までより人間らしく、何より私達家族と話す時間が増えたことが嬉しい。

人生に於いて何が一番大事か?という問いかけに、今のヘンリーはきっと「家族」「友人」と答えるだろう。
テンプレートな展開でありながら、ハートウォーミングで素敵な話だなと思わせる辺り、脚本がいいのだろうな、と思ったらJ・J・エイブラムス。
そして、音楽は安定のハンス・ジマー。

20代?30代?の頃観た時は、父と今みたいな関係になれるとは想像できなかった。
プレゼントを送っても、返事する時間さえないくらい忙しかったのに、今では電話で気づくと一時間も話していることがある。
外へ出られないから、人恋しいんだろうな、と思う。
相変わらずな我儘に困らせられながらも、仕事に取られていた父が、やっと自分だけの夫になってくれた…とどこか母も喜んでいるんじゃないかな。

少し前、父が自分の仕事の経歴をうちの息子に宛てて、手紙に書いてくれたことがあった。私も知りたいと思って、息子にそれを読ませてもらった。

泣いた。。

父のことを何も知らなかった自分を恥じた。今まで不満に思っていたことを全て、許そうと思えた。

家族は顧みなかったかもしれないけれど、
父がどれだけ社会のことを思い、仕事をしていたかを初めて知り、どうしてもっと早くにそういう話をしなかったんだろう、、と悔いた。

自分語りなんて、そんなに若いうちからするもんじゃないのかもしれない。
言い訳せずに、自分を貫いた父が眩しい。

結婚式の前日にも、"お世話になりました"の一言も言わなかった私。
人の心が通じ合うのには、時間がかかるのだなぁと思う。

今は、心から父のことを尊敬している。

産んでくれて、ありがとう。
育ててくれて、ありがとう。

と手紙を通してだけど、私からも伝えられたこと、良かったと思っている。


精一杯、父との時間を悔いのないよう過ごしたいと思う。


今作を観て、気持ちの整理ができた。

観て良かった。。
あーさん

あーさん