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愛と死の谷間のmingoのレビュー・感想・評価

愛と死の谷間(1954年製作の映画)
4.4
なんなんだこの映画は。2時間ノンストップてんこ盛り、情報過多すぎて脳がシュッシュッポッポッだよ。
只事ではない不穏なモチーフのオンパレードに、熟練役者に些細な仕草を施す演出とやはり時空を切り裂く「間」が凄まじい。「黄色いからす」でも登場したひとときの静寂をもたらす亀はゴショヘーの愛玩か。黒川町の面々が診療所から帰るとき少年の前に立ち塞がった汽車から立ち登る黒い煙がラストでは自転車が横切ることで希望が見出せる伏線なのかは知らんけども、探偵という職業を口実に津島をストーキングする比呂志、水槽ビヤホールから遊覧船アイスキャンディー波止場での「人間万歳」!人間って素晴らしいんだよ!と力技できたかと思えばハットを被ってまたもや登場、好きな人に不快を与える比呂志はもはや安定、シンカネ脚本井上和男の傑作「熱愛者」で人前ではしたない!と岡田茉莉子を嗜める比呂志を想起させる。きしょくて最高。医者として、人として、じぶんと最後まで葛藤し苦悩する津島に対して依然人間語りとストーキングを辞めない比呂志はついにビンタまで繰り出すがそれでも感化されず騙されずじぶんを全うする津島姐さん流石!に尽きる。この映画で唯一フレッシュさを発揮する新人安西郷子は2万5000円で売られるモデル人形製作所で精を出す反面、どうしようも無い功兄さんはシュッシュッポッポにならざるを得ないゴショヘードSすぎ。我知らずな蝶子ばあさんと、船上で比呂志の左こめかみに右フックをかます酔いどれ卜全と5人の息子を頑張って養う二重尾行探偵の是空が暗い物語に笑いを添える。序盤の、本命津島・センセのミカタ乙羽・本妻高杉×三股かけるクズ宇野重院長の攻防が本筋だが乙羽が好きよと迫るシーンでの宇野が脱いだ靴下に当たった陽の光の気持ち悪さも見逃せないし、三竦みになった場面での座布団の上に落ちたコップの困り顔も見どころ。希望通りに事が進んだ乙羽信子が下唇を噛むとこめちゃかわ。彼女とは正反対にすべてを失い「昔の光〜今いずこ〜」ととち狂う高杉が北林婦長にビンタをくらわすも何もなかったかのように診療所の奥へ幽閉する最後大奥かよ。滝廉太郎もこんな歌の使われ方予定にないよ。
早すぎたゴショヘー、、、ヌーヴェルバーグより早い本作、夜明けはまだ先。
助監督に古川卓巳。
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