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一心太助 天下の一大事のAONIのレビュー・感想・評価

一心太助 天下の一大事(1958年製作の映画)
4.0
錦ちゃんと月形爺ちゃんの擬似親子コンビは実に最高。 難点を挙げるとすれば、さほど「天下の一大事」と大騒ぎする程の事件でないことぐらい。

沢島忠監督は、本シリーズでは錦之助の「素」の魅力を引き出すことを意識して演出していたらしい。せっかちで喧嘩っ早く、けれど気立てが良く男っぷりのいい江戸っ子。錦兄ィ、なんて愛らしいキャラなんだ!

本作で一心太助の庇護者というべき彦左老人を演じるのは月形さん。沢島忠監督にとって月形さんは東映入りを口添えしてもらった大恩人なわけである。だから、この役には月形さんに対する沢島監督の愛情と尊敬の念が込められているように思えてならない。この役は月形さんの晩年の十八番となったわけだし、いい恩返しになったのではないだろうか。

<作品トリビア>
中村錦之助主演の『一心太助』シリーズ第2作目。沢島忠の監督第6作目。アジア映画祭主演男優賞、京都市民映画祭監督賞、ブルーリボン大衆賞(中村錦之助)受賞作品。

タイトルバックである魚河岸シーンの、長い横移動ショットは圧巻。五百坪のステージを組み、朝露で魚河岸市場の屋根瓦が光ってるように見せようと、大道具スタッフが千枚余の瓦全部に油を塗って作り上げた苦心のショットである。クライマックスの御輿合戦シーンの迫力あるカットバックも必見。
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