男同志の友情を借りながらも、描きたかったのは米国メキシコ不法移民問題?~クセがすごいの vol1 ~
先月末のニュース
”米国とメキシコ国境での不法移民の拘束者数が1日あたり4000〜5000人と2022年12月に比べて半分近くに減った”(日経新聞)
減ったといっても、1日5,000人。。。昨年末はその倍の1万人/日!!
昨年一年間では、拘束された人の数は計200万人を越えたそうです。
すみません、時事ネタが枕で(笑)
というのも、この映画、メキシコから不法入国してきた、メルキアデス・エストラーダという移民の埋葬のお話なのです。
メルキアデス・エストラーダが生前、友達になったのが、トミー・リー・ジョーンズ演じる主人公ピート。
ピートはどこにでもいそうな米国カウボーイのおっさんです。
あるとき、メルキアデスが遺言をピートに伝えます。
「もしも自分が死んだら、故郷メキシコの村に埋葬して欲しい」
自分よりも年下のメルキアデスに、ピートはそんなの俺のほうが先だわと軽く受け流してたのですが、メルキアデスが不慮の死をとげる。
生前、メルキアデスは自分の馬を気に入ったというピートにあげると言います。
断ったピートに、「もうあんたの馬だよ」と。
メルキアデスは素朴でとてもいいヤツでした。
故郷メキシコに家族を残してここへやってきた。
ピートはそんなメルキアデスの遺言を律儀に守り、メキシコの彼の村まで、彼の遺体を馬で運ぶことになります・・・
普通、埋葬って一回こっきりのところ、なんで3回も埋葬するのか?というところがこの物語のミソです。
物語の時系列をくずしているので、最初はじゃっかんわかりにくいところがあったけど、独特なテイストにかなりしびれる映画でした。
— 男同志の友情を借りながらも、描きたかったのは米国移民問題? —
本作の脚本家が、メキシコの不法移民がいないと米国の経済は回らないと言ってましたが、冒頭のニュース記事からしても、実態はそうなのかもしれません。
拘束されずに国境をすり抜けた不法移民たち。
通報されると困るので、足元みられて低賃金で労働力を提供せざる得ない。
ところが、米国のブルーワーカーからすれば、自分らの仕事を低賃金の移民に奪われるので、移民には反対。
移民に反対するブルーワーカーの支援を受ける共和党→トランプでてくる→メキシコとの国境に壁をつくる
一方、雇う側からすれば移民のような低コストで潤沢な労働力はとても使い勝手が良い。
ただ、それをストレートに言うのもなんなので、
それって人道的にどうなのよ?ちゃんと国家として移民受け容れようよ!
人道面で移民に理解を示す(裏の理由は別にして)比較的富裕層の支援を受ける民主党→バイデンでてくる→国境の壁建築中止
まあ話はそんな簡単ではないのだけど、そういった米国固有の政治政策の視座をもってこの映画をみると(そんな大げさな笑)、なんとなく別の風景も見えてきます。
というのも、この映画、脚本家がいうような「男の友情を描いた」というには、あまりなピートの言動なもんで・・・友情のためにそこまでするぅ?
ピートさん、そこまでするには、友情を越えたそれ相当の何かがあるんでしょ?
と勘ぐってしまったが、特にそんなことは描かれなかった。
— 謎の宇宙人はどっちより? —
トミー・リー・ジョーンズといえば、聞いてるところだとかなりの日本びいきで、缶コーヒー好きな謎の宇宙人、あるいは黒い服着た宇宙人バスターというイメージが定着してますが(してないか笑)、実はハーバード卒のインテリで、”不都合な真実”でおなじみの元米国副大統領アル・ゴア(民主党)と、ご学友だったそう。
この監督作品は賞とってるし、評価は高いものの、なんとなーく、多少なりとも彼の政治信条が絡んでる映画ではないのかなぁと勝手に邪推もする。
まあでも、そんなこと考えずにみても、十分面白い作品です。
アメリカの田舎については知らないけど、あっけらかんに不貞が描かれてたりするし、とにかくメルキアデス・エストラーダの遺体がキツイ(見た目も)・・・
ほんと普通の映画じゃない、クセがすごいんです(笑)