【原作から遠く離れて】
フォークナーの『サンクチュアリ』の映画化だそうです。
ただし、原作からは遠く隔たっています。
原作は、良家の令嬢ながら遊び好きな女学生が、全然階級の異なる人間の住む家にたまたま泊まることになり、処女を失うばかりか、精神的な大打撃をこうむるという筋書きです。
時代設定は両大戦間の時期ですから、この頃は女が結婚前に処女を失うのは、少なくとも中流以上の家庭では、あってはならないことでした。
つまり、全然救いのない物語なんです。
しかしこの映画はそれとはかなり位相を異にする展開です。
つまり、ヒロインが乱暴されるまではまあまあ同じなのですが、その後裁判で、問題の家族内での殺人事件が取り上げられて、そこで自分がこうむった凌辱はそれとして、ちゃんとした証言をする、という内容なのです。
まあ、当時のアメリカ的な、健全な展開と言うしかない。
原作がなければこれでもいいんでしょうが、原作があるので、映画の限界が感じられてしまう、と言っておきましょう。
ただし、私は原作をさほど評価はしていませんが。