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暴風の処女のodyssのレビュー・感想・評価

暴風の処女(1933年製作の映画)
3.0
【原作から遠く離れて】

フォークナーの『サンクチュアリ』の映画化だそうです。
ただし、原作からは遠く隔たっています。

原作は、良家の令嬢ながら遊び好きな女学生が、全然階級の異なる人間の住む家にたまたま泊まることになり、処女を失うばかりか、精神的な大打撃をこうむるという筋書きです。

時代設定は両大戦間の時期ですから、この頃は女が結婚前に処女を失うのは、少なくとも中流以上の家庭では、あってはならないことでした。

つまり、全然救いのない物語なんです。

しかしこの映画はそれとはかなり位相を異にする展開です。

つまり、ヒロインが乱暴されるまではまあまあ同じなのですが、その後裁判で、問題の家族内での殺人事件が取り上げられて、そこで自分がこうむった凌辱はそれとして、ちゃんとした証言をする、という内容なのです。

まあ、当時のアメリカ的な、健全な展開と言うしかない。

原作がなければこれでもいいんでしょうが、原作があるので、映画の限界が感じられてしまう、と言っておきましょう。
ただし、私は原作をさほど評価はしていませんが。
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