しかC

トウキョウソナタのしかCのレビュー・感想・評価

トウキョウソナタ(2008年製作の映画)
3.6
次男が給食費をこっそりピアノ教室の月賦に充てる場面、小学生が1人で習い事のお願いに来たら、普通ならその場で保護者に電話して確認取ってから了承すると思うけど、この映画だと「そう、じゃ来週からいらっしゃい」で全て完了してしまう。こういう〝手続きの省略〟がいかにも映画的で、その映画的省略を〝これは映画なんだからそういうコトでわかるでしょ?〟とでも言うような態度でやれるとこまで徹底的にやる。ピアノ教室のシーンはささやかな省略だけど、次第にそういった省略の積み上げが効いてきて、やがて〝省略〟は〝飛躍〟となり、どんどん観念的で寓話感が醸成され、キヨシ映画独特の雰囲気になっていく。これが観たくてキヨシ映画を観ている気がする。

* * *

ところで、物語終盤で急に出てきて変なキャラを演じる役所広司、黒沢清作品ではたぶんこれが最後の出演だと思うんだけど、最後は海に向かって車でそのまま突っ込んでいったのかな と思われる轍を残してキヨシ作品から姿を消した。実にキヨシ的世界観の去り方。
しかC

しかC