えいがうるふ

12人の優しい日本人のえいがうるふのレビュー・感想・評価

12人の優しい日本人(1991年製作の映画)
3.9
ギリギリ昭和感の残る絵面がノスタルジック。
いかにも三谷幸喜の本らしく、登場人物たちが皆それぞれにかなりアクと主張の強い曲者で、見ている方はそんな彼らのキャラクター描写にいちいちイライラさせられる。特に、最後の最後に至ってもなお一人で我を通そうとするある人物に対するフラストレーションは他の登場人物たちと共に観ているこっちまで爆発しそうになるが、序盤には全く予想できなかったある人物の一言できれいに場を収める締めくくりはさすがで、脚本力の高さを思い知らされる。

役者陣の演技も安定している。舞台を見ているようなリズム感のある展開で、順繰りにスポットのあたる役者たちの芝居がかった滑舌の良い演技は確かに楽しい。
ただ逆に言えば、生の演劇をそのまま録画して映画に仕立てたようなまどろっこしさがあり、これはどうせなら生の芝居で観たい展開だなぁと何度も思ってしまった。
つまり戯曲としては素晴らしく完成度が高いだけにわざわざ映画にした意義があまり感じられず、カメラワークや音響・その他演出に映像作品ならではの工夫や面白みは今ひとつ感じ取れなかった。

それでも脚本の巧みさに救われ、なんだかんだ言って最後には無事に自分がその場に居ない13番目の優しい日本人になれた気がして気分良く終われたので良しとする。