円柱野郎

BALLAD 名もなき恋のうたの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

BALLAD 名もなき恋のうた(2009年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

あの名作「戦国大合戦」を実写化するという無謀なことを「ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴監督が挑んだ作品ですが、個人的にはあまり納得できないリメイクでした。
そもそも監督の向いている方向が違うんだろうけど、オリジナルで感じたクロサワへの憧れというかニオイが全く無い。
山城や合戦シーンの再現は頑張っているのが分かるけど、合戦シーンで何人もの登場人物の戦いをワンカットで描いたために、戦場という空間が逆にこぢんまりと感じられてしまった。
俯瞰シーンは良いんだけど、やはりクローズアップでワンカットアクションをやる場合は、効果的なのは特定のキャラを追った時くらいなんじゃないだろうか。

しかし大きく違うのは、やはり主人公の侍・又兵衛と廉姫の恋模様。
結末は変わらないにしても、お互いに伝えきれないまま…ではないところが安っぽくなってしまった。
オリジナルで印象に残る又兵衛としんのすけの"金打(きんちょう)"シーンが無いのも、この映画で感動要素を損ねている部分。
でも監督は敢えてやっている様で、そのカットの理由が「あのシーンがあると又兵衛が自分の気持ちを打ち明けられないから」というものだそうで…。
そんなことでカットされたんじゃ俺は納得できない。

元々実写化に不利な作品だと思うけど、さらに難しくしているのは原作の野原一家の存在。
主人公を又兵衛にすると、話の切っ掛けに過ぎない未来家族には野原一家はエキセントリックすぎる。
ということで設定を変え、ちょっと勇気が足りない少年とその一家という平凡な川上一家となったわけだけど、これが一家のバックボーンの描き込みが足りないんだよね。
特に両親は、にわかには信じられないタイムスリップを信じないといけないという、現実では無理のある役回りなのに、それを“母親の勢い”として力押しで描いたもんだから全然説得力がない。
野原一家なら、それまでのTVや映画で積み重ねたギャグ一家のイメージがあるから、父親であるひろしの独走も笑ってみてられるんだけど、ここはオリジナル家族に変えた分だけ不利なわけで、展開に強引さが際立ってしまって勿体ないなあ。

というか「クレヨンしんちゃん」を実写にするためには野原一家が邪魔になっていたなんて、全くもって矛盾した話じゃないか!
円柱野郎

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