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南極料理人のtheocatsのレビュー・感想・評価

南極料理人(2009年製作の映画)
1.0
学究的側面と極地的厳しさ欠落のダラダラ劇

原作の雰囲気が締まりを欠いたダラダラ調だったのなら本作はこれでよかったのかもしれない。しかし、個人的感想としては全篇だらしなさ過ぎた。

タイトル通り極限の南極基地における食事提供をメインに据えるなら調理場面でオオーッと驚き納得できるような手際の見事さや、思わずよだれが湧いてくるような料理の旨そうな雰囲気を強く演出すべきだったと思う。

・隊員同士の他愛ない連想的会話からのイセエビフライという流れは悪くなかったが、肝心の巨大エビの油揚げ場面を省略したのは残念。

・肉の固まりを焼くギャグアイデアとして油まぶし放火は良しとしても、肝心の出来上がりが表面が焼けただけの単なる生肉。薄切りにするならまだしもあんな分厚く切って頬張っても旨い訳がない。普通にステーキとして焼くのがベストだった。

・平らなシーズヒーターでは熱効率が悪い丸底中華鍋で調理出来るものなのか極めて疑問。(シーズヒーターは真っ平らな鍋底であればかなり熱効率が良い)

・麵打ちのかん水代わりに重曹はありだが、アルカリ成分(重曹)と酸成分の混合体であり水溶により中性化発泡してしまうベーキングパウダーでラーメン同様の味わいになるか不明。(パスタを重曹湯で茹でるとラーメンみたいになるのは実際に確認している)

・即席めん盗み食い頻発には調理室や食品庫に鍵をかければ済む話。

・バター盗み食いはそれだけのカロリー摂取が必要という極地作業の大変さを描写してこそ説得力が出てくる。などなど・・・

料理に関しては上のように不満が残るが、一番大事なのは極寒過酷な極地でどれほど真剣に隊員が日々の仕事をこなしているかという描写があってこその食事場面であって、本作ではそのシリアス部分が極めて弱く少なく、ただただ隊員たちのだらしない側面ばかり強調されるため、見ているこちらも弛緩する一方になってしまう。

まぁ本作は厳しくがみがみ言うような人間には向かないというだけのことなのだろう。


気に入ったエピソードとしては嶋田久作さんの艦長役。この方は端役でちょっと出るだけでも抜群のインパクトを残すので顔を見るとうれしくなってしまう。笑

南極派遣中に失恋し、代わりに「いい声」の電話オペレーターに恋した高良健吾。最初は邪険にされたのに、その後も何度かアタックして口説き落としたということなのだろう(よく電話会社がそんな通話を許したものだ)、隊員引き揚げ帰還の空港に高良を迎えに来ていたのには、まぁよかったじゃねえかと。笑


総評一つ星

022009
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