あ

偶然のあのレビュー・感想・評価

偶然(1982年製作の映画)
4.3
主人公がザッカーバーグに似すぎてて笑ったのは置いといて...

最初に見せられる過去も未来もバラバラな断片が、奇跡のように結びついていく様が圧巻でした。掴んだ汽車の手すりは初恋の人とイデオロギーへ、捕まえてきた駅員はかつての親友と信仰へ、ホームで引き留めた恋人は華々しいキャリアと死へ。こうした大胆な物語の跳躍からは、キエシロフスキの運命論者的な価値観が見えてきます。と共に、今時よくありがちな風に、人生の挫折に「責任」を問うのではなく、運命として仕方がないものだとして全てを抱擁するようなキエシロフスキのあたたかな視座の根源は、ここにあったのかと気付かされます。運命はどうにもできないが、カメラを回すことはできるというような感じがキエシロフスキの一番の魅力なのかと思いました。

そして最もドラマチックなのが、唯一明確に回収されなかったように思えた断片「ポズナニ暴動の夜、先に生まれたこと」がなければ、この映画が始まらなかったということに、鑑賞後じわじわと気づいていくことです。
あ