後年映像化した作品よりもだいぶソフトな仕上がりになっているし、ことあるごとに主人公の娼婦・マヤ(轟夕起子)が友人の婦人警官から娼婦の仕事を辞めるよう説得され悩むので説教臭い作品になっているがそれでも当時はシュミーズ姿になる女優たちも含めて凄いセンセーショナルな映画だったんだろうな。
復員兵を演じる若い頃の田崎潤(このときは田中実という名前)が結構イケメンで野生的な男性フェロモンも結構出しているので役柄に似合っている。水島道太郎が珍しく轟に説教をする神父役を演じているが、ちょっと胡散臭い。
この時期監督のマキノ雅弘がヒロポン中毒だったためか、陰影や風、雨といったディテールや音の使い方がしつこく文芸映画というよりホラーみたいな映像になっている。特に後半轟が教会に駆け込むところは出てくる影がおどろおどろしくて怪物が出てくるんじゃないかというほどの怖さ。
ラストは希望に満ちた終わりかた。
焼け跡が生々しい有楽町や銀座の映像が貴重。