長谷川

あの胸にもういちどの長谷川のレビュー・感想・評価

あの胸にもういちど(1968年製作の映画)
3.7
マンディアルグの小説『オートバイ』の映像化作品。原作は未読ですが、おそらくジャンルとしては純文学なのでしょう。
作品の発表は1963年、ヨーロッパが猖獗を舐めた大戦から18年がたち、戦中戦後生まれの若い世代が新しい文化を生み出しつつあった時代です(ビートルズの結成が1960年、ローリング・ストーンズが1962年)。

過去(第二次世界大戦)から現在への飛躍は、ヒロインが愛人の元へ向かう行程でも象徴的に描かれていて、ヒロインと夫が住む郊外は墓地だらけ、しかもまだ埋葬されていない兵士の死体が転がっている(私だったらそんな所に住みたくない😅)。

戦争の影を色濃く落とした、ある意味時間が止まったような田舎町から、ハイデルベルク(フランスにとっては旧敵国のドイツ)へと。
革のスーツをまとってさっそうとバイクを駆るヒロインはまさに新たな時代、若者のエネルギーを体現しているように見える。

バイク、自由恋愛、性(生)と隣合わせの死。衝撃のラストは実にフランス文学らしいなと。原作を読んでみたくなった。

とはいえアラン・ドロンがめちゃくちゃかっこいいし、スタイル抜群のヒロインと60年代ファッションが可愛くて目の保養になる。
長谷川

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