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フレッシュのGreenTのレビュー・感想・評価

フレッシュ(1994年製作の映画)
3.5
これが私が観たい黒人映画です!

12歳のマイケル(シーン・ネルソン)は、ゲットーに住む黒人の男の子。フレッシュというあだ名で、麻薬の売人のパシリをやっている。毎朝、学校へ行く前にヘロインやコカインの精製をしている人たちの家に受け取りに行き、売人に届けなければならないのだが、学校に遅刻すると気にするとてもいい子。

フレッシュが普通のアパートに住んでるラティーナのおばさんのところに、小さく小分けされたヘロインを取りに行くんだけど、クッキーくれたりやたら愛想のいいおばさんなのに、コカインの袋の数をごまかそうとしたり、腕には注射のあとがあったり、やっぱすごいところだなと思わせられます。

フレッシュは学校で仲良くしている4人組の男の子たちがいて、アメコミやTVゲームの話をファックとかシットとか言いながらおおらかに喋っていて可愛い。親友のチャッキーは、弾丸のように良く喋るメキシカンで、野良犬のロスコをフレッシュと一緒に飼っている。

フレッシュには好きな女の子もいて、「なんで私のことジロジロ見るの?」「見てないよ。お前がジロジロ見てるんだろ」なんて、小学生らしいやり取りも可愛い。

こんな風に、フッドに住んでいたって私達と共通の子供体験もあるはずじゃないですか。『Judas and the Black Messiah』の感想でも書いた通り、黒人の映画はどうしても差別の過酷さや貧困の過酷さばかりドラマチックに描いて、キャラクター造形がおざなりにされることが多いと感じるんですけど、これはフレッシュ少年の「普通の子供時代」が描かれる。

でも、フレッシュ少年は他の地域からヤクを買いに来る人たちに「売り子」をする場面もある。客は車でやってくる白人たちだ。ドライブスルーのように、車から降りずに買う。

この白人の客でカメオ出演しているのが、プロデューサーのローレンス・ベンダーなのですが、この人は『レザボア・ドッグス』を始め数々のタランティーノ作品のプロデューサーをした人で、タランティーノの作品にも必ずカメオ出演しています。この作品も「タランティーノ・ユニバースの一角」という位置づけでのカメオ出演らしいです。

また、サムL.ジャクソンがフレッシュのお父さん役で出ています。才能あるチェス・プレーヤーなのですが、アル中なので身を持ち崩しているって設定みたいなんだけど、酔っ払っている感じ全然しなくて頭良さそう。フレッシュもチェスが上手で、『ボビー・フィッシャーを探して』の撮影が行われたワシントン・パーク・スクエアでチェスの賭けをやって勝ったりしている。

フレッシュはおばあちゃんといとこと叔母さんと、11人で小さなアパートに住んでいて、お父さんとは会っちゃいけないことになっているみたい。細かい事情はわからないけど、これがゲットーの現実なんだなあって思う。

近所のバスケットボール・コートで少年たちがバスケをしているシーンは、黒人の映画ではお馴染みですが、この映画で出てくるカーティスって男の子、多分フレッシュと同じ年くらいだと思うんだけど、すっごい上手い。これ本当にやっていると思う。

しかしジェイクという16歳位のギャングスタの男の子は、カーティスに敵わないのが悔しくて銃で撃ち殺す。公園で遊んでいた子供たちが一斉に逃げ出す。

フレッシュは逃げない。なんでかっていうと、フレッシュの好きな女の子が流れ弾に当たって死にそうだからだ。

フレッシュは、ストリート・スマートというか、売人たちのことも怖がらず、正当な報酬を要求したり、客やヤク中の女も上手く扱う。だけど知的なフレッシュはこんなところは抜け出したいと常々思っていたので、この事件がきっかけで本気で貧困から抜け出すことを考え始める・・・・・

というミステリー仕立てになっていて、ギャングスタ同士のマシンガン撃ち合いとか殺し合いみたいな泥臭いアクションじゃない、こういう「スタイリッシュなジャンルもの」映画を黒人の生活に当てはめて作れば面白いのに!っていうのを体現してくれた映画でした。

なんですけど、黒人のスラングやラティーノのブローケン・イングリッシュがなかなか難しくて、私は途中まで話の真意がわからなかった。iMDb によると、この映画のインスピレーションになったのは黒澤明監督の『用心棒』だそうなので、こちらに精通している方にはわかるのかも。


ネタバレはコメント欄で!!
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