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日本のいちばん長い日のsyuheiのレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)
4.5
太平洋戦争開戦から82年目の前日ということでこれが観たくなった。1967年の岡本喜八監督作品。

1945年、太平洋戦争最後の年、日本は連合軍からポツダム宣言の無条件受諾を迫られていた。8月14日の正午に受諾を決定し翌15日正午に玉音放送が行われることに。閣僚たちが不眠不休で対応にあたる一方で、敗戦を断固として認めない陸軍将校の一部がクーデターを画策していた。史実に基づく歴史ドラマ。

半藤一利氏の同名小説の映画化。玉音放送という"日本帝国の葬式"(下村宏=志村喬)に取り組む鈴木貫太郎(笠智衆)内閣の裏側で起きた宮城事件(終戦反対事件)の発端から鎮圧までを、阿南陸軍大臣(三船敏郎)らを軸に描く。昭和天皇を松本幸四郎が演じているが顔がはっきり映るシーンは無い。

56年前のモノクロで2.5時間超のランタイム、顛末がどうなるかわかっているにも関わらず、手に汗握る緊張感で観た。多数の人物が登場し複数の場所で複雑な事態が進行するにも関わらず全く混乱せず映画として無類の面白さ。橋本忍氏の脚本と岡本喜八監督の手腕、そして戦争体験者の役者たちの迫力だ。

印象的だったのはクーデターの中心となった若き陸軍将校の畑中(黒沢年雄)で、最初こそいちおう理屈を並べ立てていたが、東部軍や司令官などが説得に応じず決起の気運が広がらないと感情的になり精神論ばかり、遂には対する相手の戦力と自身の引き際を見誤り破滅する。実に象徴的だ。

本作を観ると『シン・ゴジラ』がいかに多くの面で影響を受けているかがよくわかる。次々と表示される職名と名前のテロップだけでなく、対称的に人物を配置する構図、スピーカーから流れるアナウンスの口調に至るまで、まさに本作へのオマージュ。旧きを温ね新しく面白い映画が生まれる好例だろう。

歴史を繋ぎ(遅きに失したとは言え)国民を守るという国家の機能が、敗戦という"みじめな"瀬戸際でどう維持されたのかが伝わった。ささやかながら、ひとりの国民として出来ることを頑張り、先人たちが遺してくれた平和の維持に貢献しようという気持ちになった。同時に『ゴジラ-1.0』が大嫌いになった。

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