ヒデ

「A」のヒデのレビュー・感想・評価

「A」(1998年製作の映画)
3.7
「ある意味出家する前より、現世というものに直面した感がありますからね」

サリン事件の"後"の教団の様子を、フリーのテレビディレクターが体当たりで密着取材したドキュメンタリー。

「A」とはメインの取材対象である広報副部長の荒木浩のこと。

オウム真理教の中に残された人たちの困惑、そして偏向報道をするマスコミへの怒りが映し出される。

事件自体は絶対的に悪であれど、中にいる人たちには純粋な気持ちで修行に励んでいた人もおり、人生を掻き乱されてしまった悲哀を感じた。そのうちの一人が言っていた「グルがどんな人間であろうと構わないと僕は思ってんですから。僕を最終的な解脱まで導いてくれるのは、尊師しかいないという確信があるので」というセリフがとてもキツい。

一方、教団を囲むマスコミ側がヤバかったことも告発するような内容になっていて、横柄な記者やカメラマンたちがわんさか出てくる。マスコミ報道も偏見に満ちており、そこに一矢報いるドキュメンタリーにもなっている。といっても事件から数日しか経ってないし、全然インタビュー答えてくれなかったから無理もないのだけど…。

教団とマスコミ、どちらにも己が信じる正義があるので一概にどちらを悪とは言えないが、警察が公務執行妨害のイチャモンつけて逮捕するくだりだけは完全に警察が悪だった。ビデオが証拠になったのはすごい。


以下、セリフメモ。


「現実的に…麻原さんがね。釈放されるってことはまずないですよ。つまり、皆は二度と麻原さんには会えないかもしれない」
「…そうですね」

「あなた方がそうやって揚げ足取るならじゃないですか!」

「そっちが勝手に不審者にしてるわけでしょ?」

「私も(サリン事件が)あったかなってことしか言えないんですけど…」

「(あなたの)性体験は?」
「おそらくないでしょう」

「親から授かったこの生というのを全うしたいと。私なりに。不完全な形で終えたくないと。だからここにいるんだと。この先もこの道を辿っていきたい」
ヒデ

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