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トリコロール/青の愛のkojikojiのレビュー・感想・評価

トリコロール/青の愛(1993年製作の映画)
3.8
 間違いなく好みの映画とわかっていたが、なぜか遠回りしてきた。

 「青」🟦が印象的。プール、モビール、壁、そして主人公ジュリーを演じるジュリエット・ビノシュイメージそのものが「青」の感じがする。
 青は自由の象徴。しかし気分はブルー🟦 憂鬱(ゆううつ)なのだ。
 夫との歳月の記憶・愛から解放される姿を描く。
 言わずとしれた「トリコロール3部作」第1作だ。

#1386 2023年 420本目
1993年 フランス🇫🇷/ポーランド🇵🇱/スイス🇨🇭映画
監督: クシシュトフ・キェシロフスキ
音楽: ズビグニエフ・プレイスネル
撮影: スワヴォミール・イジャック

 高名な作曲家の夫と幼い娘を交通事故で一度に亡くし、自らも重傷を負ったジュリー(ジュリエット・ビノシュ)は一度は自殺を図るが死ねず退院する。夫と過ごした家を処分し、パリへ引っ越したジュリーは一人暮らしを始めるが、夫が遺した協奏曲の旋律が、どうしてもジュリーの頭をよぎってしまう。
 そんなある日、処分したはずの夫の未完の楽譜の写しを夫の同僚でジュリーに思いを寄せているオリヴィエがその協奏曲を完成させようとしているのを知る。しかも夫が見知らぬ若い女性と共に写っている写真も公開されていた。

 失意の彼女の描き方が印象的だ。ゾッとさせる大きなネズミとその生まれた直後の子供の姿や、石の壁を傷つこと知りながら拳をすべらせるシーン、プールの水中から浮き上がった時に突然なりひびく旋律と暗転。認知症の母との会話。そんなシーンの重なりが彼女の不安と焦りを象徴的に描いているように見える。彼女のもがき苦しむ姿が切ない。
 それだけに、吹っ切れた後の彼女が力強く感じる。

 監督が描く映像は、繊細で、暗示的で言葉で描けないものが直接心に問いかけるようで素晴らしい。
 「青い愛」とした時から、すでに白、赤は企画されていたはずで、つまりはこの作品は第1部なのだろうから、これからどんな風に描かれているのか楽しむことにする。

 ジュリエット・ビノシュを堪能し、完全に彼女のファンになった。
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