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学校のTSのレビュー・感想・評価

学校(1993年製作の映画)
4.4
【国家百年の計「教育」の真髄】
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監督:山田洋次
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:128分
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1993年日本アカデミー賞最優秀賞作品
最初に申し上げますと素晴らしい傑作の一言に尽きます。特に教員を目指している人からするとかなり心に響くものがあります。世の中こんなに良い教員ばかりではないですが、まさに今作の西田敏行演じる黒井先生は教員の理想像と言えるでしょう。

まず学校という言葉から。
学校は英語でschoolです。
これはギリシア語のスコレーから来ているようでして、その意味は暇。
つまり古代ギリシアでは、暇つぶしのためにいく施設が学校であったと解釈できます。これは非常に面白い由来ですね。

舞台は夜間中学校。教職課程をとっている人からしても、あまり表舞台に出てくることはない夜間中学校。対象は義務教育を修了していない者。在日外国人や時代に伴い義務教育を最後まで受けれなかった人が希望すれば随時入学できるシステムのようです。憲法26条における、教育を受ける権利を如実に表した素晴らしい施設とも言えるかと思います。

今作に登場してくるのは、不登校になった人や、未成年時に読み書きを教わらなかった人、知的障がい者や在日外国人という方々です。その授業内容も到底中学の指導要領に沿っていると言えず、これこそ場合により変更を加えることができるという例でしょう。

教育は国家百年の計と称されます。これは的を得ていると思います。
僕たちが今こうやって文字を読み書きできたり、簡単な計算ができたり、はたまた何がいけないことで何が正しいのかを判断できるのは何故なのでしょうか?
それは紛れもなく教育による結果だと思われます。そして我々にその教育を施してくれたのが学校となります。
何気なく学校というのは、人間の成長において極めて重要な役割を果たしているのです。
それはもちろん教科によるものだけではありません。教員に叱られたり褒められたりしたり、考えさせられることにより養えた道徳観。これらは全て学校生活で養えたはずです。人間が人間になるべくして通い続けたのが学校なのです。

我々が現在こうやって普通に生活をしているのも、この基盤があってこそなのです。学校で文字を教わらなければ、この文章すら読めない。このことは、話すことと読むことが次元の全く違うものとわからせてくれます。
その象徴として今回登場させられているのが田中邦衛演じるイノさんです。この田中邦衛の演技は本当に素晴らしかったです。高齢になっても車の免許をとるために文字を覚えようとする。だから夜間中学校に入学する。素晴らしい姿勢です。
またもちろんのことなのですが、やる気さえあればやっていけると檄を飛ばし、入学を許可する夜間中学校の姿勢も素晴らしいですね。やはりこういうのを見ていると、教育の有り難み、重要性をより認識できるかと思います。人によっては小学校、中学校の勉強を嫌々していたかもしれませんが、やはりあれは意味があるのです。

教育論のことを言いはじめると中々終わらない気がしますので、このあたりで閉じておきますが、今作はそのあたりを非常にわかりやすく描いた傑作であると思います。
また今作のもう一つの大きなテーマが、幸福とは何か?です。いかにも道徳らしい授業内容ですが、それに関しては物語終盤で生徒が答えをだそうとします。

幸福とは何か?
何故勉強するのか?

この二つは意外にも密接に繋がっているようにも思えます。
そして最後の不登校だった女性の決意には涙を流させられてしまいます。やはりこうやって影響を受け続けてきた人が教員を目指していくのかと、そう考えさせられました。

教員は背中で教えるもの。

大学時代の先生がいった言葉です。非常に奥深い言葉だと思います。生徒は知らず知らず教員の背中をみて成長してきているのです。

誰もが経験したことがあるであろう教員と生徒の対話。黒板が前にあり、それに向き合う机と椅子。ある意味非現実的な空間にてやりとりされる教員と生徒のドラマを是非ご鑑賞あれ。

好き嫌いは分かれるものの、僕からは特段文句はございません。こういうメッセージ性の強い映画はどんどん量産されるべきですね。日本アカデミー賞最優秀賞も納得です。
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