KnightsofOdessa

戦場のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

戦場(1961年製作の映画)
3.5
[異次元のパワーを持つ背景] 70点

夫オレクサンドル・ドヴジェンコの遺した脚本を妻であるユリア・ソーンツェワが映画化し、女性監督としてカンヌ映画祭史上初の監督賞を受賞した作品。1941年~終戦~戦後を生きたあるソ連軍兵士イワン(とその周りの人たち)の年代記。ナチスとの戦場描写は、長回しで機銃奪取を描いたり、爆走する戦車とカメラが並走したり、航空機で広大な戦場を駆け巡ったり、人海戦術で進軍したり、10階建てくらいの建物が爆破されたり(登場時間10秒くらい!)と金のかかったソ連戦争映画的なダイナミズムを感じる。映画全体が泥に塗れたかのような薄暗く薄汚い色彩なのだが、一番凄まじいのがイワンの恋人ウリャーナが逃げるシーンの、黒煙とそれによる黒い影が同じくらい画面を専有していて、その見分けがつかないとこだろう。影、黒煙、ウリャーナがレイヤーみたいになってわけわからん迫力がある。背景がイカれてるシーンは他にもあり、銃撃されて気絶したイワンが小舟に横たわって花びらの舞う川を下るシーンや列車を飛び降りたイワンに後光が指してるシーン、室内の暖炉が赤黒い光を壁に投げかけるシーンなどいくらでも出てくる。崩壊した教室に生徒たちが集められ、後ろの方の生徒がバトル漫画の"能力者集結シーン"みたいな座り方してたとこは爆笑した。ショットがありえんキマってるというわけでもないんだが、それとは別次元の底知れぬパワーを持った画面が展開され、圧倒され続けた。これは多分リマスターとかしちゃいけないタイプの映画だな。

ラストの空のショットは完全に『大地』の頃からドヴジェンコの使う自然礼賛的な趣がある。夫婦でここまで作風が似るものなのか?
KnightsofOdessa

KnightsofOdessa