Mikiyoshi1986

サスペリア PART2/紅い深淵のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

サスペリア PART2/紅い深淵(1975年製作の映画)
3.9
イタリアン・サスペンスホラーの重鎮ダリオ・アルジェントが監督デビュー5年目にして、自身の様式美を確固たるものにした正統派ジャッロ映画。

批評家時代に培ったそのセンスと現場での実務経験によって演出力には一層の研きがかかり、
絶えず観客に良い塩梅のハラハラを与えながら良質な猟奇スリラーを構築していきます。

「サスペリアPART2」というトンチンカンな邦題はさておき、
そもそも原題「PROFONDO ROSSO」はDEEP RED:深紅という意味で、
後に付け加えられた「紅い深淵」という邦題さえも誤訳なのが更に不憫…。

主人公が殺害現場を目撃して以降、連続殺人事件に深入りしていく過程はデビュー作「歓びの毒牙」の延長線上にあり、
翌年の「サスペリア」を経て「フェノミナ」へと続いた70~80年代の流れはまさに彼の円熟期に相当すると云えるでしょう。

殺人シーンを含めて鮮烈な赤をベースにしたシークエンス、撮影監督の美学が端々に込められたカメラワークも素晴らしく、
美術面の抜かりのなさが70年代のイタリアの趣を漂わせます。

不気味なフラグを丁寧に打ち立て、意表を突きながらラストへ突き進むスリルはまさに一流の貫禄。ただし、アルジェント作品だから細かいことは目を瞑ること。

アルジェントの嫁で後に「サスペリア」の執筆にも携わったダリア・ニコロディも重要な役柄を演じ、そのキャラが緩衝材になっているのも醍醐味。
車の椅子とか地味に好きです。

また、印象的なサントラはお馴染みGOBLINが手掛けており、確か本作がGOBLINとの初仕事になるのかな?
あのベースラインが単純ながらもかっこよくて、部屋でたまに弾いたりします。
と、そうこうしてる間にあの子供の歌がどこからともなく流れ始めたらもうアウトです。
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