トムヤムくん

我等の生涯の最良の年のトムヤムくんのレビュー・感想・評価

我等の生涯の最良の年(1946年製作の映画)
4.1
第二次世界大戦が終わって故郷へと帰ってきた三人の帰還兵。1人は火傷で両手を失って、義手になってしまった男 ホーマー。1人はPTSDを患ってアルコール中毒になってしまった男 アル。そしてもう1人は、帰還兵ゆえに全く職が見つからない男 フレッド。戦後の社会に適応できず、過去に取り残された男たちの悲劇を映し出す。

本作は公開されると瞬く間に話題となり、トーキー映画としては『風と共に去りぬ』に次ぐ第2位の収益を記録。第19回アカデミー賞では10部門にノミネートされて、作品賞を含む9部門を受賞した。これは『ウエスト・サイド物語』に抜かされるまで、当時の史上最多受賞記録である。

目まぐるしく変化する社会に着いていけない様は、戦後に限らずコロナ禍にも通ずるものがある。価値観のアップデートが追いつかないアルに対して、息子が「それ差別発言だよ」と返すシーンも、未だによく見る光景。

この普遍的な内容を余すことなく描き切るウィリアム・ワイラーって本当に天才なんだな〜と改めて実感する。尤も、この時代から本物の障害者を起用し、アメリカが一番触れづらかったであろう社会問題を堂々と語り尽くすところはワイラーの熱が感じられて良かった。(とか言いつつ、この人『ミニヴァー夫人』とかいう戦意高揚映画も作ってたけどね)。まぁ不朽の名作には変わりない!