【やや物足りないかな】
イザベル・コイシュは、『死ぬまでにしたい10のこと』は物足りない作品、『あなたになら言える秘密のこと』は充実した作品という印象でしたが、今回はどちらかというと『死ぬまでに・・・』に近い感じでしょうか。
映像は美しい。音楽もいい。ペネロペ・クルスが大胆なシーンを見せているのもいい。私はこれまで彼女をあんまり魅力的だと思ったことがなかったのですが、今回は美しい。特に前髪を切った女子学生姿が様になっています。私は前髪を切った女性に弱いので、素直に(?)魅惑されてしまいました。
しかし、見終えて物足りなさが残るのは、脚本の弱さからでしょう。
老教授と女子学生の恋愛。ベン・キングズレー演じる教授には老いゆえの焦燥があるはず。それは或る程度は表現されていますが、そうした感情をもっと前面に押し出すようにしないといけないのではないか。
また或る程度二人の仲が進んでも、老人と若者は感受性や価値観が異なる部分があるはず。いくらお互い愛し合っていても思わず知らずそうしたズレが露呈する時があるだろうと思う。それが特に老人の側にはこたえるわけで、そこいらをうまく表現していればかなりの秀作になったと思うのですが、ややきれい事というか、平板になっているのが惜しまれます。
ペネロペ・クルスにしてもそう。若い彼女が老教授に魅せられたのはなぜか。そこに必然性を感じさせるような設定が欲しい。老いた男に惹かれるような境遇で育ったとか、たまたま若い男と付き合ってみて失望したというような描写があるなら、納得できるのですが。
或いは、逆にふつうの若い娘とは違う資質が彼女にはあるというのでもいい。その場合は、交際の初期で追ってきた彼に脅すような言葉をかけるシーンは逆効果でしょう。あそこでは、ありきたりな若い娘が老人に条件付きでの交際を迫っているような印象しか受けませんから。
最後の持って行き方も、ちょっと唐突。老教授の息子との関係の締めくくり方と合わせて、うーんと思ってしまったところです。