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ロボコップのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ロボコップ(1987年製作の映画)
4.3
 近未来のミシガン州デトロイト、街は荒廃し、犯罪が増加していた。TVモニターに映された陳腐なニュースの数々、巨大コングロマリット企業「オムニ・コンシューマ・プロダクツ」(オムニ社)によって民営化された警察を含む街全体が支配されていた。そんな中、オムニ社は未来都市「デルタシティ」の建設を予定していた。事件で危篤となったフレデリック巡査の代わりに、オムニ社の指令で南署から転属して来たアレックス・マーフィ巡査(ピーター・ウェラー)は早速相棒の女性警官アン・ルイス(ナンシー・アレン)と共に街へ出て行く。一方その頃オムニ社では、副社長であるジョーンズ(ロニー・コックス)らによって開発されたロボット「ED-209」が、銃を捨てたことに気付かずに社員のケニー(ケヴィン・ペイジ)を射殺、計画は白紙に戻される。ジョーンズとは別に独自のロボット開発を予定していたロバート・モートン(ミゲル・フェラー)はこのチャンスを利用し、その開発に着手する。しかし、そのためにはロボットの候補となる「人間」が必要であった。指名手配中のマフィア「クラレンス一味」を追っていたマーフィーとルイス。応援の警官の到着に20分かかると言われた2人は一味の隠家を発見し、潜入するも敵に捕まり、マーフィーは腕をショットガンで吹き飛ばされ、防弾チョッキに無数の銃弾を浴びた後、頭を撃ち抜かれ即死する。

 近未来を舞台にしたSFアクションは、80年代のレーガン政権への痛烈な風刺に他ならない。TVモニターから流れる心底陳腐な映像では、国防用レーザーの誤作動により、100人以上が犠牲となっている。荒廃した街に転属となったマーフィには愛する妻と子供がいるが、出勤時に手を振って見送られた一家の大黒柱は、転属早々の殉職という悲劇に遭う。そもそもルイス警官と組まされた時点で、捨て駒だとしか思われていない。過激な人体改造を施されたマーフィは「ロボコップ」として生まれ変わる。①公共への奉仕、②弱者の保護、③法の遵守というオムニ社の3つの教えがプログラミングされた男は、強盗、婦女暴行、市長誘拐と順調に治安の悪化を防ぐものの、徐々に悪夢のような幻視に悩まされる。ルイスにより「マーフィー」の名を提示された男は、自分のルーツを探り始める。引っ越したばかりのデトロイトの3人暮らしの部屋、既に引き払われた部屋の中身、幸せだった頃の妻エレン(アンジー・ボーリング)が夫を優しく向かい入れる。だがそれは既に彼の現実ではない。階段で意外な弱点を見せる「ED-209」の末路、オムニ社の醜い立身出世の内部争い、3つの教えがプログラミングされたサイボーグには、加えて4つ目の教えが彼の野心を阻む。鋼鉄の仮面を外し、異様な頭部を剥き出しにするロボコップの姿は何度観ても胸に迫る。徹底して陳腐な映像は資本主義の行く末を暗示し、主人公の哀れを一層際立たせる80年代の紛れもない名作である。
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