冒頭30分で「何故これが純愛映画になるのか」と不思議でならないほど最悪な気持ちになった。前科3犯、もうどうにもならないであろうダメな男。やることなすこと全て犯罪で見てられない。
ああ、でも、この世界に居場所を作れなかった“姫君”にとって、それは将軍であり王子のお出ましだった。
己の平面でしかものを見れない所に、また本当に憂鬱になってしまった。
話が進むにつれて見えてくるジョンドゥの一目で分からない障害、コンジュの見える障害以上に出来ること、誰にも分かってもらえなくて誰も分かろうとしない二人のこと。
真夜中の電話、些細な喧嘩、ジャージャー麺と逃した終電。
妄想を廻らせて服を選び紅を引き恋をするコンジュの事も、本当は無いはずの過失致死傷罪を自ら被る優しいジョンドゥのことも、誰も知らない、理解ろうとしない。
他者を、社会を、巻き込む事が出来なかった二人の大恋愛の末のやり取りは、まるで鈴鳥のように、大きな音を立てて折れる恐ろしい木の枝と、呼応するように大きな音を立てるラジオ。
きっとまたいつか会えると恋い焦がれる二人を想う。コンジェの嬉しそうに掃除をする姿が愛おしい。
またいつか、なんてあるかも分からないけれど、そこにはまた沢山の壁があるだろうけれど、それでも少しだけ希望を持って生きていけるのであれば昨日よりマシだ。
ハッピーエンドは誰かが決めるものじゃない、もう恐ろしい木のオバケは二人のオアシスには映らないのだから。
