おれさま

クレイマー、クレイマーのおれさまのレビュー・感想・評価

クレイマー、クレイマー(1979年製作の映画)
4.2
"I'm his mother."

原題:Kramer vs. Kramer
原告、被告ともにクレイマー。離婚・親権争いを題材にした作品。原題のvsは正しくもあり、とても辛いもの。

大好きな作品。
久しぶりの視聴となりました。
涙で前が見えなくなる。
打ち込む文字もなんでもよくなってきた。

親子で作るフレンチトーストが最も有名なシーンであり、無言の時間と共に流れる親子の時間は何にも代え難い。ビリーを見る、あの時のダスティン・ホフマンの目が忘れられない。
少しずつ変わりゆく姿、完全な父のそれ。
なにより、撮影期間中ダスティン・ホフマン自身が離婚調停中だったようで、脚本にもかなり反映されていたようですね。

そのダスティン・ホフマンの妻役である、メリル・ストリープに脱帽。自信ない表情や目線、口下手で所在不明な感情。突発的でもあるが、内に抱える大きな闇。見事な表現力。

ビリー役のジャスティン・ヘンリーには、心が揺さぶられた。彼の言葉と表情が、この作品を映画としてではなく、身近な問題として捉えられることができた所以だと思う。我慢する姿、わがままで困らせる姿、リアルな5歳の苦悩が映画の顔ともなった。
夕食を食べずにアイスを食べて怒られるシーンは、実際にヘンリーの体験からなる話だったそうで。もう愛おしい。

1970年代、アメリカにおいては女性の独立が強く主張されていた時代、いわゆる、woman libという女性解放運動が盛んに行われていたようで。その結果、離婚が増え、子どもの存在が蔑ろにされてしまうといった悲劇も多く、時代をかなり反映した作品だったとも言える。

焦点がテッドに置かれていることにより、ジョアンナの批判的意見はわかる。"パパが幸せなら、ママも幸せだと思ってたんだ"これも容易く思いがちなのかも。それこそがwoman libが行われる原因かもしれませんね。相手を思いやる気持ち、相手の気持ちに立つ、結婚って奥が深いですね。そして、夫婦間への他者の介入…難ですね。結婚してませんが。

共働きで育った自分として、よくよく言われた言葉。喧嘩の都度、"お父さん、お母さん、離婚したらどっちにつく?"子どもの頃は、なんてこともなく聞いていた話。今思えば…なんてのも野暮ったい。子どもはやはり、被害者なのかもしれませんね。

時代と共に映画は作られる、そんな名作です。

2人だからこその、最後の精一杯の言葉。
"terrific"
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