三四郎

純情二重奏 前篇の三四郎のレビュー・感想・評価

純情二重奏 前篇(1939年製作の映画)
4.6
素敵なハッピーエンド!
高峰三枝子にとってはハッピーエンドだが、木暮実千代にとっては辛いバッドエンド。なんといってもラストシーンが秀逸。皆からの祝福と新しい船出、前途洋洋たる終幕は、いつでも私を感動させる。そして「歌で暮せば」の大合唱が花を添える!なんて軽快で爽やかなメロディかしら。
三枝子の嬉し涙に潤む瞳と木暮のやるせない表情に淋しき瞳、これぞ大船調メロドラマ!女優を美しく切なくキャメラにおさめている。

この作品、典型的なメロドラマで、メロドラマのお手本とも言える秀作だが、哀しいかな、映像に雨が降っていて、ところどころ大雨停電といった感じ(フィルムが傷だらけ)。長尺作品にもかかわらず、72分の総集編になっているので、展開が早すぎて、あらすじのようになってしまっている。
「お父さんとお呼びしたのは今日初めてですけど、きっとこれが最後だろうと思います…さよなら」と言っておきながら、次には「お詫びに上がりましたの…」これには、いくら大胆にカットされ繋げられている「総集編」なのだとわかっていても度肝を抜かれた笑 まるでコメディ!ツッコミ満載!

本当は、当時の有名歌手陣が登場し、さらに彼、彼女らのヒット曲を歌うシーンもあるという超豪華歌謡映画の大作だったらしい。そのバージョンが見たいものだ。

驚かされるのは、当時の映画、特に松竹大船調に多いかもしれぬが、女性が積極的で、女性の方から男性へ愛を告白してるということ。また、どちらから告白するにしても実に率直というか、直球ど真ん中ストライクでスカッとするような言葉なのである笑
「何考えてらっしゃるの?当ててみましょうか?」「ええ」「メロディでしょ?」「よくわかりますね!」「あなたのことでしたらなんでも…お邪魔でしたら向こうに行きましょうか」「いやぁ、いいんですよ。そばにいてください」
ロマンチックな科白で、品のある言葉遣いだ。
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