円柱野郎

ニュールンベルグ裁判の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

ニュールンベルグ裁判(1961年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

冒頭、ニュルンベルクに到着したヘイウッド判事。
宿泊する家に案内された判事の態度は控えめで良い人そう。
裁判が始まると4人の被告が現れる。
初めの3人は罪状認否で無罪を主張するが、最後の一人…ナチ政権下での元法務大臣ヤニングは黙して語らない。
その姿を見たロルフ弁護士は「無罪です」と代弁する。
この流れだけでこの映画が良くできた映画なのだろうと分かってしまう。

裁判劇なので登場人物も多く、話もキチンと組み立てなければ見てる方が混乱することもあるわけだが、冒頭の状況説明を、流れの中で登場人物の人柄から、誰がこの物語の中心なのかまでハッキリ示す演出は上手いなあ。
通訳を通して会話しているという“記号”も次第に省略してテンポを守っているし、話の運び方が実に分かりやすい。
3時間の長尺映画だけれども、法廷内外をテンポ良く描き、一流の俳優たちの演技もあって最後まで飽きさせることのないドラマになっていて感心した。

国際裁判は勝者が敗者を裁くものになってしまう。
この映画は史実を基にしたフィクションで、内容は創作であるけれども、「ナチスに与した者の罪」を通して戦争犯罪とは何かを考えさせるものでもある。
例えばナチが行っていた精神病者への断種は、米国の偉大な法律家も支持していたではないかという弁護側の主張。
ヤニングに面会したロルフ弁護士が「ヒロシマとナガサキに原爆を落とした様な米国に道徳性が?」と言い放つ場面に、一言では片づけられない問題の大きさを感じる。

ホロコーストの事実を当時のドイツ市民は知っていたのか。
政権に与していた者ならば知っていたのか。
第一次大戦後にドイツが困窮した時代、ヒトラーの登場によってドイツが復興したのは事実。
しかし過渡期の事では済まなくなったナチスの暴走の責任はどこにあったのか。
ヤニングが無実の1人を死刑にしたことが後の何百万の死の始まりだったのか。
考えさせられる。
円柱野郎

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