王冠と霜月いつか

サマーウォーズの王冠と霜月いつかのネタバレレビュー・内容・結末

サマーウォーズ(2009年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「戦とはそういうものだ。他人を守ってこそ己を守れる。己のことばかり考える奴は己をも亡ぼす奴だ。」
-島田勘兵衛

8月1日が、重要キャラクター陣内栄さんのお誕生日という事による特別興行。おそらく個人的に3回目の鑑賞だと思いますが、スクリーンで観るのは初めてです。細かいシーンは大夫忘れていたのでその辺の確認を含めて楽しめました。

ログライン・どんな映画?
…ハッキングA.I.「ラブマシーン」vs 陣内家の合戦を通して、主人公達が自信を取り戻していくストーリー

1幕目:
まだスマホが一般的に普及されていない、メインデバイスがケータイだった頃のお話。
現実世界と密接に関わる仮想空間「OZ」の設定説明、主人公、数学オリンピックの日本代表に惜しくも成れなかった男「ケンジ」が、夏休みのバイトとして、学校の憧れの先輩「ナツキ」の実家で行われる、曾祖母「栄」の誕生日会に同行する所から物語がスタート。バイトのメインミッション:ナツキの偽の婚約者として親戚一同と顔合わせ。おそらく、栄さんは、ナツキの嘘だとわかっていたんだろうけど…。ケンジは如何にもZ世代の若者ってキャラクターなんですけど、普段は物静かな感じでも、いざという時は、驚く様な強めの自己主張をしたりする…自分をしっかり持っているっていうのかな。得意技は数学。結局ね、論理的思考常駐で生きて行けるのが最強でしょうね。思ったのは、出て来るキャラクターのほとんどが、何か得意技一芸に秀でていますよね。
結局、ゼネラリストなんて役に立たないんだよな。キャラが起ってナンボの世界の映画の中だったら特に。
 栄さんの亡き御主人の妾の子「侘助」が、10年振りにアメリカから帰って来て一悶着あり、ケンジの所に来た暗号メールをきっかけに物語が展開し始めます。

2幕目:
ハッキングA.I「ラブマシーン」が、メタバース「OZ」を乗っ取って、世界中が大混乱。ケンジもアバターを乗っ取られ、愉快犯主犯格扱い(笑)…
この混乱を沈静化させるのが、栄さんの黒電話というのが洒落てますね。栄さんがデジタルネットワークに対抗するのは、人脈というアナログネットワーク。関係各所のトップに直電して、叱咤激励。ここは大好きなシーンで、栄さんの
「ここで頑張らないでいつ頑張るんだい?」
「諦めなさんな。諦めないことが肝心だよ」
「あんたならできる。できるって」
の言葉に涙腺が弛んでしまいます。その事を、現場で救助活動で動いていた孫達に賛美されても
「私ャ何もしてないよ」とサラッと。本当天晴れなキャラクターなんですけど。その後、そのラブマシーンの開発者が「侘助」だと知り、彼の発言と亡き主人との記憶がバッドシェイクされ→薙刀振りかざして大立ち回りをした後、ケンジと花札🎴の勝負をしてまるで自分の寿命がわかっていたかの様に曾孫をケンジに託して狭心症で翌朝亡くなってしまいます。本当悲しいシーンですが、これで、栄さんの弔い合戦の狼煙があがり最終決戦が始まります。

3幕目:
栄さんの
次男の万作(VA.永井一郎さんのお元気な吹き替えが嬉しい)
一介の町の電気屋とは思えない万作の息子・太助
所属はちょっと言えない自衛隊の理一さん
万作の孫・佳主馬=キングカズマ
が力を合わせて、ラブマシーン=大日如来を封じ込める作戦に。結果あと一歩の所まで追い詰めたものの…。細田守監督は、キャラクターと同世代の全て観客達に共感して貰えるように作ったそうですが、三世代のそれぞれのキャラが活き活きと活躍する…もっと言うなら、総勢28名の家族全員を大なり小なり無駄の無いポジションで活躍させているのが素晴らしいですね。とても難しい事だと思いますし、これこそがこの作品の魅力だと思います。
 「まだ負けてない」一族が怒りの大日如来の暴走を止める為、奪われたアバター達を取り戻す次の作戦は、eゲーム「花札🎴」プレーヤーは「ナツキ」…地球全体の命運をかけて勝負するのが、家族全員が、栄さんに鍛えられている「花札」という面白い展開ですね。冒頭から出て来るマクガフィンがなぜ花札なのかは、ずっと疑問でしたが、「栄」さんのVA.富司純子さんの映画「緋牡丹博徒・花札勝負」のオマージュなのだそうです。
掛け金は、アバター。ゲームに勝てばアバターを取り戻せて、主要アバターを奪い返せれば、大日如来・ラブマシーンから「OZ」を奪い返す事が出来る。
ここも素晴らしい見せ場で、全てを失った?と思わせてからの、小さな男の子が自分のアバターを掛け金に使ってくれ発言からの、開放されていたアバター達が一斉に協力を申し出てくれ、一気に大逆転!これで勝負あったと思いきや、陣内家の座標のワールドクロックのカウントダウンだけが止まらない。このままでは、衛星あらわしが直撃し、陣内家のみならず周辺地域一帯に甚大な被害が及ぶ。開発者・侘助の解体作業も間に合わない。ここで、ケンジが、あらわしに偽のGPS信号を送って誘導し落下地点を変えさせようと試みるも、暗号コードがそれを阻む。紙と鉛筆を使って暗号を解く!また新たなコード!解く!又々新たなコード!時間はもう残り僅か、そして…必殺時短暗算で、決めゼリフ(何度目かの)
「よろしくお願いします!」


直撃を免れた陣内家で行われる、栄さんの葬儀と誕生日会、物凄い列を成す訪問者達…

最後の鼻血シーンは物足りないというか、ベタ過ぎるけれど、倫理的に仕方が無いラストシーンでしょう。栄さんの遺影も満面に笑みに変わっていました。

長くなり遅くなりましたが、お誕生日おめでとうございます。栄さん、貴女の眼力通り、ケンジ君はやってくれましたよ。安らかに。

また来年の夏にでも。