きのはる

エレファントのきのはるのネタバレレビュー・内容・結末

エレファント(2003年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

冒頭に出てくる金髪黄Tシャツの紅顔の男の子とカメラ小僧が犯人の二人かと思いきや、開始二十分ぐらいでさらっと武装した二人組が紅顔の男の子とすれ違って「おっふ」ってなった。「ウトヤ島、7月22日」を思い出しました。現実の悲劇は予兆も伏線もないって。
事件が起こる直前も高校生たちはいつも通りの日常を過ごしている。イケメンは彼女とデートの計画を立てていて、短パンを履くのが嫌な喪女は図書室でバイトしている。女の子三人組は母親の悪口を言って、早く大学生になりたいとか言って、「私たち友達でしょう?」と喧嘩をして一瞬で仲直りしている。
ハイスクールライフ系のアメリカドラマをたまに見るけど、それらに比べたら彼女らの生活は別段劇的でもお洒落でもない。だからこそ魅力がある……と思うのはきっとその後に起こる惨劇を知っているから。劇的でお洒落なものが破壊されるのはフィクションでは良くあるから、ノンフィクションでは適さないのだと思う。
それはそれとして、異国の日常というのはどんなに平凡でも見ていて楽しい。犯人の少年の一人がボトルの牛乳をラッパ飲みしているところとか、アメリカ特有道の広い住宅街を下手な運転の車が延々と運転しているところとか、酒を飲みながらぼーっと見てるのは楽しい。目覚めたら忘れる夢の中にいるような気分にしてくれる。
登場人物がやたら校内を黙って歩くだけのシーンがあったけど、あれもなかなか良かったな。これからここで凄惨な事件が起こりますよ、今は平和ですよ、これが僕たちの学校ですよって黙って見せてくれるの。

ところで悠然とした足取りで犯人に近づいて行った黒人のガタイのいいお兄さんがいたけど、彼は一体なんだったんだ……
きのはる

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