彦次郎

ゴルゴ13の彦次郎のレビュー・感想・評価

ゴルゴ13(1983年製作の映画)
3.9
ゴルゴ13と呼ばれる超A級スナイパーのスーパーアクション!1968年連載開始以来作者死してもなお連載が続く(2023年時点)大長寿漫画が原作。寡黙冷静沈着非情という性格に加え銃撃、格闘、運転、色事(性交中に来客が来ても続行するメンタルも含める)等全てのスキルを備えた超人ですが、墓石のように冷たく細い目とその目の倍は太い眉毛に独特なほうれい線が顔に刻まれたビジュアルのほうが常人離れしています。
若い世代の方には床屋でオッサンが読むとかコンビニにやたら置いてあるとかの認識でしょうが多数の脚本家により作成されたエピソードは幅広くクオリティは高いです。前置きが長くなりましたが本作はその名作揃いの原作より『帝王の罠』、『ヒドラ』、『チェックメイト』を元にオリジナル要素を加え”登場人物に深く感情移入する”(wikipediaより)出崎統演出が加わり原作よりも独特な作品となっています。ゴルゴ13が人間臭くなったせいか病的な用心深さが減少し不覚をとる場面が多いのも一因でしょう。ただ原作のさいとうたかを先生は本作を観て「面白い」と評していたのは述べておかねばなりません。
一匹狼のため周囲はほぼ敵で稀な味方及び依頼者は不慮の死を遂げるハードボイルド展開はいつも通りですが作品の世界観から逸脱したキャラが何人か登場してくるのが劇場版の特徴。1人は長身で歯がなく涎をたらし美女に蛭のように喰らいつくスネークという狂人でゴルゴ13が倒せなかったCIA3人組の猛者を目潰しや魚の開きみたいに殺す残虐さを持ち最終決戦のエレベーター内死闘も妨害が無ければ多分勝っていたと思われる作中でも屈指の強さです。なおこいつの声を演じた方が後のテレビアニメ版でデイブ役になるとは意外でした。あとの2人はゲリラだかを2000人殺したとかいう触れ込みのゴールド&シルバー。名前の通りの衣装とマスクで何回殺しても生き返って襲ってくる怪物ぶりでシルバーの最期は意味不明な怖さでギャグのようにも感じてしまいました。もっともゴルゴのほうも別場面で明らかに胸を銃弾で撃たれているのに絶命せずにいるから釣り合いは取れているといえます。原作ファンからするとゴルゴはどんな窮地でも冷静な判断力と知力で自分を上回る強敵を倒してきたのでその点は残念でした。
世界初のCG使用(オープニングの意味不明な髑髏は怖かった)が話題となりましたがむしろ無駄に流血と濡れ場シーンを多用しているほう今なら話題になりそうです。情報屋のオッサンの帽子をとって挨拶するくだりは『あしたのジョー2』のゴロマキ権藤にしか見えなかったり敵のフォルムが『コブラ』ぽかったりと出崎統の美学というか嗜好がぶちこまれたハードボイルド作品として記憶に残りました。
彦次郎

彦次郎