ひでG

どん底のひでGのレビュー・感想・評価

どん底(1936年製作の映画)
3.8
1936年作、フランス映画
現在の感覚で観ると、ストレートに理解し難い部分と、
世代や国を超えて理解できるところか半々

ハッゲージを読むと、
ギャンブルに溺れ、自殺をしようとした
男爵と、
その屋敷に泥棒に入った男が意気投合して、友情が芽生える、

そっか、階級や貧富のギャップを超えたヒューマンドラマ系か、って、勝手に先入観で先を予想してしまった。

あるいは、チャッブリンの名作(私のオールタイムベスト!)の「街の灯」のように
そこから、反転して、まだ元の階級に戻る話か、、

でも、2人の友情は、一つの軸であることには違いないが、メインではないように感じた。

メインは、やはり「どん底」 
ゴーリキーの原作は、かつて読んだことがある記憶だが、殆ど記憶にない。
その代わり、黒澤明が監督した「どん底」は、かなりのインパクトが残っている。

この作品でも、ジャンギャバン演じる泥棒のペペルが暮らす長屋?のような「どん底」生活やその住民たちの描写がかなり
時間を取って描かれている。

だが、原作や黒澤明版のように、心底「どん底」感は、薄れているように、僕には感じた。

現に、男爵から転落して、この生活に入り込んだ男爵は、この生活に馴染んで、結構気楽に生活しているように描かれている。

そこには、男爵を演じたルイ・ジューヴェのひょうひょうとし、落ちぶれながらも、芯の部分で、貴族としての気品を漂わせた名演技があるのだが、
決して彼は落ちていったのではない、と描いている。

劇中でも、ジャン・ギャバンとルイ・ジューヴェが草の上で寝転びながら会話するシーンが実にいい感じだ。

男爵は、自分の過去を振り返りこう話す。
「僕の人生は、制服を変えただけだった。」
立場や地位というものに自分をはめることを第一義に生きていた彼が、初めて自由を手にした瞬間のような気がした。

とは言え、「どん底」生活を、
「貧しいことは美しきことなり」みたいな
安い松竹風には全く描いていない。

主要人物が主要な会話をしている後ろで
その貧困街の人たちや時には子供たちが
さりげなく映し出される。

このような映像って、とても新鮮だ。
無理やり意味付ければ、画家ルノワールの血を継ぐ監督さんの「絵画的映画表現」なのかもしれないな。

一番最初に書いたように、この作品の意味するところや魅力を十二分にキャッチしたとは言えないが、とても興味深く観ることができました。

最後に二つ!

ジャン・ギャバンはかっこいい!
若いからキレがめっちゃあるし、この歳からもう渋い!

それから、ラストは、チャッブリンが
あの名作でこれをパクったかな?😃

PS虫のあとだったから、映画のレビューが書きたかった😅
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