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ヒューゴの不思議な発明のTSのレビュー・感想・評価

ヒューゴの不思議な発明(2011年製作の映画)
3.9
【メリエスを知っているかで変わる】83点
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監督:マーティン・スコセッシ
製作国:アメリカ
ジャンル:ファンタジー・ドラマ
収録時間:123分
興行収入:約1億8400万$
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フィルマークスでの平均スコアあまり高くないですね(笑)確かに今作は賛否がはっきり分かれそうな作品です。ジャケットやタイトルからしてハリーポッターの世界観でワクワクする発明品が作られていくのかなあと思われるので、そのあたりを期待して見ると撃沈されるかと思います。今作に興味を持てるかどうかは恐らくジョルジュ・メリエスという男を知ってるかどうかに尽きるのではと感じました。幸いにも彼の代表作『月世界旅行』だけは鑑賞していたので、彼に一定の感情移入が出来ました。つまるところ、今作の主人公はヒューゴというよりもメリエスと言えそうです。

1930年代のパリ。孤児のヒューゴは駅構内でのらりくらりする生活をしていた。そんな中、駅構内の片隅にある玩具屋で一人の老人と出くわす。老人は、彼が泥棒だと思い捕まえ、ノートを没収するのだが。。

邦題の「不思議な発明」には首を傾げられますが、彼が修復しようとしている機械人形が動いた時、全ての謎が解け、大きな感動が起こります。この老人は、ジョルジュ・メリエス本人であり、破産してからは駅構内の片隅でしがない玩具屋を営んでいたのです。彼はリュミエール兄弟のシネマトグラフに初期から注目し、様々な映画を作ってきた有名人であり、「魔術師」とも称されたくらい。彼は、映画が商品になると誰よりも早く予見し、実に500本以上にのぼる作品を生み出してきたのです。
しかし、第一次世界大戦が始まってからは民衆も映画を見る気力を失い、メリエスは破産してしまいます。また、彼の貴重なフィルムは靴のかかとに加工されていくという始末。やけになったメリエスはついに自分のほとんどのセットやフィルムを燃やしてしまうのです。

これは、ヒューゴという一人の少年のフィクションの物語に、メリエスという偉大な映画監督の物語を組み入れた作品であり、メリエスの話はおおよそ事実だそうです。奇しくも現在残っている彼の作品は80程だそうで、我々が普通に見れるのはさらにその中の数十本。長い人類の歴史において、100年というのはそれほど長くない期間。しかしその100年でも、映画を保存するのは至難の技なのです。スコセッシ監督は恐らくメリエスに重点を置き今作を描いたのだと思います。映画界の父とも言える彼に敬意を表して今作を作ったのではと感じました。

子どもが見ても、一定のファンタジックな世界観が今作には広がっているため満足できるかと。また、大人が見ても、そのあたりのメリエスの事情を知っておけば楽しめるかもしれません。その分、ヒューゴのエピソードがイマイチでして、ここがもっと濃かったらさらに良作であると感じました。
まあそれはともかく、メリエスがどんな人生を送ってきたのかということを知れてよかったです。お陰で、『月世界旅行』以外の彼の作品にも興味を持つことが出来ました。

ちなみに、リュミエール兄弟が作中で映画を流すのですが、そこに出てくる作品群は今考えれば錚々たるものです。世界最古の実写映画である『工場の出口』をはじめ、『ラ・シオタ駅への列車の到着』が放映されており、特に後者に関しては、あまりの迫力に観客が逃げ出そうとする始末。また、メリエスの作品もラストにテンポよく流してくれますのでまさに映画黎明期への愛が溢れる作品と感じました。

ヒューゴの物語はともかく、メリエスの物語に響きましたし、何よりも今作を見て映画黎明期の作品を発掘していこうと思えましたのでこれくらいのスコアです。
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