GreenT

ラブ・ザ・ドッグ 犬依存症の女のGreenTのレビュー・感想・評価

2.5
40過ぎても独身で、キャリアもどん詰まり。ボーイフレンドがいないばかりか、友達さえあまりない。心の支えは愛犬・ペンシルだけ・・・・

こんな独女のペギーを見て、私たちは彼女を憐れに思うのでしょうが、「本当にこれは憐れなのかな?」と考えさせてくれる映画です。

会社で仲良くしている同僚のライラ(レジーナ・キング)は、男がいることが女の幸せと固く信じていているんだけど、それに執着し過ぎていてボーイフレンドが浮気性だということが見抜けない。

弟の奥さんのブリット(ローラ・ダーン)は、子供がいないペギーを見下している感じで、自分の子供にはすごい過保護。「死(death)」という言葉さえ子供の前では使わないとか、おもちゃの素材にめちゃくちゃこだわったりとか。

会社の上司は出世にしか興味がなく、ペットの死に対してはありきたりなお悔やみしか言わない。

ペンシルの死がきっかけで、ペギーは2人の男性と知り合う。1人は隣に住むアル(ジョン・C・ライリー)で、彼は飼い犬を失う悲しさを理解してくれるのですが、ハンティングが趣味で、動物の最後の瞬間を見ることに恍惚感を覚えるというのにペギーは退いてしまう。

もう1人は動物愛護協会のニュート(ピーター・サースガード)という男性で、彼は虐待された犬を調教して里親を探している人。ペンシルを失ったペギーにバレンタインという保護犬を飼ってくれないかと頼んでくる。

ニュートは「人間より動物の方が心を許せる」と、ペギーが共感できる人なんだけど、ニュートは人間に興味がないので、ペギーと付き合う気もない。

こんな風に、男と知り合っても、なんか人間関係ってややこしい。

ペギー自身も聖人ってわけじゃなくて、ペンシルはアルのガレージにあった農薬を食べたから死んだんだとアルを逆恨みしたり、保健所で安楽死させられるところだった犬を15匹も引き取ってきちゃって、騒音と匂いで近所に迷惑をかける。ブリットが毛皮を持っていることを批判したり、ブリットの子供に動物保護の教育をしようとしたりしてウザがられる。

動物愛護家っていうと、動物に執着しているあたまおかしい人みたいに言われるけど、みんななにかに執着している。恋愛、子供、仕事・・・。でもペギーは、そういうものに価値を感じないだけでなく、人間との関係って面倒臭くて煩わしい。

だから動物愛護にのめり込んで行くのは、不幸なことではないんですよ、と言いたいのだろうか、この映画は。

私の個人的な感想は、ペギーが途中、ペットの里親探しに情熱を見出して、色んな人に「犬を飼ったら?」ってすすめまくっていたけど、責任感が伴うってことがわからない人に引き取られた犬は幸せなのかな?って疑問を持った。まあ、保健所で殺されるよりはいいって理屈なのだろうけど、家に軟禁状態になって家具の一部のように過ごすっていうのも地獄だと思うのだが。

あと、家畜が可哀想だからと引き取ってきて育てる農園を「パラダイス」と呼んでいたけ、これもどーなんだろ?

というのも、ペットにしろ家畜にしろ、動物を人間の利益のために利用するって言うのはシステム化されていて、このシステムから開放してあげない限り、動物を救ったことにはならないのではないか?

ラスト、ペギーが動物愛護の抗議活動に参加することを「これが私の愛」って言っているけど、愛と言うより、誰かを救っているって思うと「自分にも価値がある」って思えるだけなんじゃないかなあと思った。そもそも動物を人間が利用するシステムがなければ、動物愛護という活動もしなくていいわけだから、「生き甲斐」が欲しいペギーのような人も結局は動物を利用しているのかなあと思った。
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