〈批判性の密度の変化が気づかせるもの〉
「チャップリンよりはキートン派かな」とか早く云ってみたいので、意を決してチャップ林に足を踏み入れる。
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資本主義社会は、利便性や経済発展の代償に多くの問題を生み出していった。過重労働や階級格差が深刻化し、不備にこそ尊さがあったはずの人間性は喪失の方向へと向かっている。現代社会のこうした様々な一面を、ちょび髭に山高帽子、ダボダボのズボンでお馴染みリトル・トランプが放浪していく。
しかし、社会批判がぎゅうぎゅうに押し込まれた前半に対し、次第にムダに近いような描写にも時間が割かれはじめる。製鉄工場における“批判じみた笑い”から一転、「拘置所で脱獄囚を成敗する」「キャバレーで歌を披露する」といった“テーマには直接関与しない笑い”が増えていくのだ。
しかしここにこそチャップリンからのメッセージが込められているだろう。批判性の密度を変化させることで、チャップリンは心にゆとりを持つことの美しさに気づかせてくれたのではないだろうか。説教を詰め込んでは豊かな人間性を物語ることはできなかった。
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『ジョーカー』の劇中曲「Smile」は本作からの引用なのね。