【葛藤】
映画としての完成度は決して高くはなくとも、長尺を一気見させるスコセッシらしい映像テクニックと極彩色の映像表現は一見に値する触れちゃいけない【タブー】に挑んだキリスト映画。内容に反してそこまで難しくはない。
マーティン・スコセッシにとっても「しんどい主題」だっただけに、ラストは説明不足だし場面が飛躍し過ぎ。キリストがパコパコSEXする場面も観念的/空想的なので、イマイチ理解に苦しむ感じではある。ポール・シュレイダーによる倫理的な脚本のお陰でどうにか保ってる作品と言えるかも。
配給が珍しくユニバーサル。スコセッシにしてはそこまで暗くなくノリが娯楽映画っぽい。キャストもウィレム・デフォーやハーヴェイ・カイテルやハリー・ディーン・スタントンなど「いつものスコセッシ」とは若干異なった印象を受ける。ジェネシスのピーター・ガブリエルのスコアが芸能山城組みたいで民俗音楽的な意匠で盛り上げてくれる。
ドストエフスキー文学の主人公にも近い内的葛藤とモノローグが、どう考えても『タクシードライバー』のトラビスを彷彿とさせ「主人公の苦悩」に重点を置いたいかにもスコセッシらしいアプローチの歴史再現映画となっている。パゾリーニの『奇跡の丘』と比較して編集が良く出来てる映画。まあまあ及第点の出来栄えと言えるだろう。
其処彼処にぶっ飛んだ映像表現が多々あり、やはりスコセッシらしいポップでスタイリッシュな感覚。私のようなファンなら絶対に観とかないと!