ジミーT

フェイス/オフのジミーTのレビュー・感想・評価

フェイス/オフ(1997年製作の映画)
5.0
この映画を作ったような人たちを「ツラの皮が厚い奴」というのでしょう。
だって、ツラの皮を貼り替えるだけで人が入れ替わり、誰も気がつかないということで押し通してしまったんだから。相当ツラの皮が厚い奴じゃなかったらできません。
ただ、これは映画にとって大変重要なことだと思います。

企画段階の会議でのウー監督とスタッフの会話を採録します。(注)
「善と悪を途中で入れ替えてアクションするんだ。理解されない孤独と絶望。絶望とは死に至る病。そして善とは何か、悪とは何かまでをアクションの中で問う。」
「でも入れ替えるって、どうやって。」
「ツラの皮を貼り替える。」
「そんな。失笑買うだけですよ。」
「それは方針にためらいがあるからさ。聞いてくれ。善悪の入れ替え方法に時間をとっていたら後のアクションに割く時間がなくなる。いいか、後のアクションこそ丁寧に描くんだ。『ツラの皮を貼り替えることで善悪を入れ替える』という方針にブレさえなければ、そこは問題ない。」
「・・・・・。」
「1974年の日本映画、山口百恵さん主演の『伊豆の踊り子』を見ろ。あの映画の舞台は1920年代の伊豆だが、最後に三浦友和さんが船で去るシーンは1974年の伊豆の港で堂々と撮影している。隠しもしない。1920年代にみえそうな所で撮ってるんじゃない。そのままロケしてるんだ。だから三浦さんが乗って去る船も1974年の東海汽船だ。しかしそこにツッコミをいれた評を俺は見たことがない。それは『現在の伊豆の港で撮影するぞ』と決めてブレがなかったからさ。ちょっとでもためらいがあってみろ、たちまち突っ込まれて映画として成立しなくなる。それと同じなんだ。いいか。二度と言わんぜ。『ツラの皮を貼り替えることで善悪を入れ替える』これで行く。黙って俺について来い。」

かくして完成した映画は極上のアクション映画で、善と悪を途中で入れ替えることにより、理解されない孤独と絶望、そして善とは何か、悪とは何かまでを問われているような、哲学的アクション映画とさえ言える最高の作品になっていたんです。


全て私の妄想会議です。
ジミーT

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