♪ どんな時だって たった一人で
運命忘れて 生きてきたのに
突然の光の中、目が覚める 真夜中に
とても優しい映画でした。
監督さんの温もりが伝わってくるようで、心の奥からポカポカとしてくるのです。
が。
それ以上にヒドい脚本でした。
目が不自由な人の家に容疑者が潜り込み、こっそりと暮らす…という物語なんですが、音を立てなければ盲目の人は気付かない、という展開にツッコミどころ満載なのです。
あのう。音を立てないように努力しても。
臭いは発生しますよね。呼吸もしますよね。臓器は動きますよね。だから、気配どころか“生物”としての存在感がバリバリと出ますよね。
「そんなの虚構だから目をつぶれよ」
と監督さんは言いたいのかもしれませんが…本作においては、その点が最も重要。未読なので詳しいことは分かりませんが、原作の主人公は“誰かに気付いている”上で、それを許容しているらしいんですね。これはかなり大きな違いです。
なぜ、見えない誰かを許容するのか。
この“想い”があるから成立する物語なんです。だから、ハッキリとは明言しなくても、それが伝わる描写は必要だと思います(ちなみに誰かの存在を疑う場面はありますが、それで終わってしまうんです)。
また、その他についても同じ感じ。
母親のエピソードは発展することなくゴロリと転がったままですし、主人公の友人が心変わりする場面も唐突過ぎて呆気にとられる始末。
あと、曲がりなりにもサスペンス的な要素を含むのであれば、その部分にも説得力が欲しいところ。ネタバレに繋がるので言及しませんが、終盤のツッコミどころも一つや二つでは収まりません。折角の優しい雰囲気が台無しになるレベルです。
まあ、そんなわけで。
ファンタジーとして捉えるにしても粗い物語。
盲目を題材にした映画は傑作が多いのですが、それらと同じレベルで期待すると肩が下がるのは必至。自発的に“見えない”気持ちになることが大切ですね(←ウマいことを言った)。