せーじ

オカンの嫁入りのせーじのレビュー・感想・評価

オカンの嫁入り(2010年製作の映画)
3.8
123本目は、前々から観たいと思っていたこの作品を。
宮崎あおいさん、大竹しのぶさん、桐谷健太さんなど芸達者な役者さんが多数出演し、映像も映画的で独特な演出が光る作品でしたが、ちょっと引っ掛かりが残る作品でもありました。

この作品、ひとことで言うと「ズルい」作品だな、と。
特にストーリーがすごく「ズルい」。
あおいさん演じる月子は、ある理由で電車に乗ることができなくなってしまった女性で、一年以上もモラトリアムな生活を送っていたのだが、そんな状況の中で大竹しのぶさん演じるオカンがおこした行動は、普通に考えると「ちょっと酷いんじゃないのそれ…」と思うような内容で、そりゃ月子だって怒るのは仕方がないんじゃないかと自分は思っていた。
ところが後半、オカンが隠していたある"秘密"が発覚するのだが、まるでその"秘密"そのもので月子の苦悩をねじ伏せるかのような展開になってしまっていて、思わず「ズルい話運びだよな…」と自分は思ってしまった。その割に桐谷健太さん演じる"彼"と打ち解けるプロセスもそこまで印象的に描けていたわけではなかったし、月子が電車に乗れなくなってしまった理由も理由でセンシティブな内容だっただけに、それらを全部"同じ箱"の中で取り扱ってほしくはなかったです。

とはいえ、出演されている役者さんたちの演技は素晴らしく、眼福だなと思ったのも事実で。もちろんあおいさんは、部屋着姿もおさんぽしている姿も通勤している姿も超超超かわいかったですし、観ていて何度も「かわいい…」と呟いてしまいました。そういう意味でも「ズルい」ですホントに。また、大竹しのぶさんのチャーミングな部分もプラスの方向に働いていて、この二人の組み合わせは母娘としてはベストなんじゃないかな、と思ったり。桐谷健太さん演じる彼も、彼自身の朴訥さと純粋さがしっかり出ていて良かったですし、個人的には國村隼さんが超シブいオジサマを好演していて、シブくていいな、素敵だなと思いました。
もちろん、ただ役者陣が豪華なだけではなく、演技演出がしっかりと成されている作品でもあるので、見ごたえがあるのではないかと思います。(自分はストーリーにはノレませんでしたが…)個人的にグッときた演出は、終盤の多幸感溢れる自転車二人乗りか~ら~の!?というシーン。現実を叩きつけるような切れ味あるカット割りで、思わず力が入ってしまいました。

そうそう、最後に忘れてはいけない要素をひとつ。この作品は、とても賢いわんこが熱演していて「わんこ映画」としてもほっこり観られる作品になっていました。レンタルショップなどで見かけた際にはぜひぜひ。
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