緑雨

アラビアのロレンスの緑雨のレビュー・感想・評価

アラビアのロレンス(1962年製作の映画)
4.0
オープニングのタイトルバックのスタイリッシュさには改めて見惚れてしまう。バイクに歩み寄り跨るロレンスを上から切り取ったカット。それに続くバイク事故に至るシーンも、丸型のゴーグル、視野を狂わせる木陰と陽光、破滅的に加速していくスピードが実に扇情的。

こんな始まり方をするもんだから、その後延々と続く砂漠やラクダまで違って見えてくる。

砂漠の大逃避行、点々と休む大群のラクダと人、大軍団の行軍に指笛?で応援する民、アカバ急襲の大迫力、スケールのデカさには圧倒される。

マッチの火を手で消す変人ロレンス、月夜の砂漠を歩くロレンス、陽炎揺れる地平線から奇跡のように現れるロレンス、周囲の目を気にしながらアラブ装束を纏って悦に入るロレンス…ピーター・オトゥールの異様なまでに碧い眼、流麗な金髪、ロレンスを演るには彼以外考えられない。

アラブの部族を結びつけて戦功を誇った束の間の英雄は、憎悪と政治に飲み込まれ次第に壊れていく。捕らわれの身になったロレンスの裸の胸に触れる敵将の唇が一瞬アップカットになる演出の妖しさ。「砂漠など二度と戻りたくない!」哀しい叫びが響く。
緑雨

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