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しゃべれども しゃべれどものtheocatsのレビュー・感想・評価

3.6
落語は分からんが下町の空気感が心地よい

うだつの上がらない落語家弟子:国分太一がにわかの「話し方教室」を開き、その生徒となった自信喪失の訳アリ美人:香里奈といじめられ小学生、そしてへぼ解説者でもある元野球選手らへ落語を教えるうちに、自らの噺家としてのアイディンティティを確立すると同時に恋バナも成就してしまうという奇妙なようでいて都合のよいストーリーもそつなく消化されていた印象。

落語の良さを判別できないのがかえって幸いしたかもしれない。それはうっすらとではあっても国分太一の噺は上手いと言える領域に達していないように感じられたから。
でも、そこはサクラ笑いや編集の妙で無難にやり過ごしたようにも思われ、瑕疵という程のことはなかった。

落語はともかくその他演技面では国分は申し分ないように見え、ヒロインと脇役陣もかっちり小気味よい演技。
※香里奈の浴衣姿にはホーッと感心。

それら芝居と東京下町の絡ませ方など、詰まる所は監督のバランス感覚が良かったということなのだろう。

一つだけ、ラスト隅田川での船上撮影時に高速高架下のホームレスハウスが途切れることなく映っていたのは恋バナ成就物語とは異質なように感じたが、それも虚構劇と現実の珍妙なミスマッチ描写と視聴者側で噛みしめる場面なのかもしれないと思ったりもした。

012105
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