似太郎

ロケーションの似太郎のレビュー・感想・評価

ロケーション(1984年製作の映画)
4.2
【トロンプ・ルイユ👁】

森崎東監督による実験的な構成の異色作。主演は西田敏行と大楠道代。若き日の竹中直人もチョイ役で出演している。終始、騙し絵的な雰囲気が強く万人ウケを排除した作品。

ピンク映画に懸ける制作クルーと貧困層の少女「笑子」の痛ましい過去を抉った現実と虚構の境界線を粉砕した森崎東らしい【怒劇】に仕上がっている。この監督らしいカオティックな雰囲気はかなりクセがあり、好き嫌いの別れそうな作風だ。

全体的に暗いATG映画や大島渚作品のような雰囲気が強く、もう少しバランスを考えてほしい。かなりの実験作ではあるものの、必ずしも成功作には非ずといった感じである。期待が大きすぎて反動でガッカリ。

全編見応えはあるし、マジック・リアリズムみたいな表現はたしかにユニークで面白いと思うのだが、観終わった後はキツネにつままれたような気分になる。主演の西田は名演だったが…。アート映画に徹するんならこのようなベタなコメディっぽい演出はやめた方がいいと思う。

反体制を声高に叫ぶメッセージ性も何となくウザい感じで、同監督の『喜劇・特出しヒモ天国』には到底及ばないと思った。スコアはギリギリで4.2を献上。
似太郎

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