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敵機空襲のmhのレビュー・感想・評価

敵機空襲(1943年製作の映画)
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いわゆる大船調ホームドラマ×プロパガンダ映画。主なメッセージは「防空、してますか?」
お見合いや地上げの話題など普段の営みにくわえ、防空演習や隣組の活動にも忙しい1943年の市民生活を描いて、クライマックスは架空の東京空襲。
敵機の観測→次々と情報が伝えられて→東部軍管区情報、空襲警報発令。というプロセスを見せてくれたり、「ヤマダさんの屋根に焼夷弾」などのかけ声をあげる警防団、隣組の活動。畳を跳ね上げた床下に防空壕ほったり、実際に燃えている焼夷弾(テルミット?)など、珍しいシーンが目白押し。
防火用水槽に張った氷を割るとか、防空対策で火たたき棒が立てかけてあったり、はしごがあちこちにかかっている。
作中で交わされる「去年の空襲」は、ドーリットル空襲のこと。
「はいってらっしゃいよ、いま、空いてるわよ」みたいな会話もいいね。時代もあらわしてるし、いかにも松竹だし。終戦近くになると、都市部の銭湯は薪が不足してきて不規則な営業にかわるはずなのだが、1943年だとまだそういう心配はなかったのかな?
一回目の空襲は撃退。二回目は撃ち漏らしが東京空襲に成功する。
この映画ができた当時は、まだ東京大空襲も起きてないので、時系列がこんがらかるひともけっこういそう。この映画に手を伸ばすようなひとは当然、わかってるか。
家が焼けたら、国が建て替えてくれるからマジ助かるみたいなシーンもあったので、1943年の段階ではそんなつもりもあったんだろうけど、実際はそんなこと追っつかないくらい日本はやられてしまうことになる。
空襲のあと、ホームドラマが再びはじまる。
田中絹代が心の内をさらけ出して、家から逃げ出して、幸せの予感に外でそわそわしているところでエンド。
へんなところで終わってるけど、これはこれでいい余韻。
空襲のミニチュア撮影はかなりの迫力だった。
工場の裏庭とか、原っぱのカットがほかの映画(小津の「生まれてはみたけれど」など)でも見た松竹大船撮影所の近くだったりするのも楽しい。
松竹のプロパガンダ映画はいいのが多いね。
面白かった!
mh

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