mitakosama

おおかみこどもの雨と雪のmitakosamaのレビュー・感想・評価

おおかみこどもの雨と雪(2012年製作の映画)
3.1
細田がマッドハウス制作から、スタジオ地図を立ち上げて初の作品。

時かけ、サマウォと違和感無く見れたのだが、今作はちょっと消化不良な印象があったな。
細田作品特有の“世界観の狭さ”が一番悪く作用したことが要因だとは思うんだ。

やっぱりさ、母親が狼男とのハーフの双子を産んで、ずうっと1人で育てるって言うのが、やっぱり変なんだよな。
変というより、正直ちょっと気持ち悪い。子育ての辛さや楽しさを表現したいのは判る。でもただただ健気に、頼るべき友達もいないで、田舎で畑耕してニコニコ生きるって、いくらなんでも無理があるもん。
母親ー母性というものをそこまで絶対的に描くのは、どうしても抵抗ある。

この物語って、母親“花”の物語と、その子供“雨”と“雪”の成長物語、この二つの物語の二重構造になってるんだよね。

逆に“雨”と“雪”の物語はすっごい面白い。
最初は男の子の“雨”の方が臆病で、女の子の“雪”の方が活発だったのが、年齢を重ねて逆になるという話。
雨は狼として山で生きることを選び、雪は恋をして人間の世界で生きることを選ぶ。
少年少女の成長劇を、狼というモチーフを使うことで上手く表現している。

狼と人、という考え方ってやっぱり押井を思い出すよね。山で生きる雨は“狼”だが、人間として生きる雪は“犬”になるんだ…と押井なら言うだろうなぁ。

雨と雪がお互いの生き方が変わってきて大喧嘩をするシーン。姉弟のパワーバランスが逆転する場面であり、凄い象徴的な場面。
獣として生きる決意をした、少年雪のなんと美しいことか。

やっぱり、母親の花の物語を減らしてでも、雨と雪の話に特化した方が面白くなった気がするわ。
mitakosama

mitakosama