ゆいこ

流れるのゆいこのレビュー・感想・評価

流れる(1956年製作の映画)
3.8
芸者の表と裏に込められた苦楽を、女中に寄り添った目線で描いた本作。
オールスターといってもいい布陣、華やかさの裏に隠れた悲哀を見事な演技合戦でいきいきと魅せる。
山田五十鈴の儚げな色気、しゃかりきとした杉村春子の悔し涙...とにかく見どころ満載。
その中でも一層共感し、応援してしまうのはつぶらな瞳で優しげな田中絹代。
あんな女中さん居たらそりゃ重宝されるわ。
引き抜き話もあったけど、確かにどんな仕事も丁寧に誠実に向き合ってくれそうだもの。
そんな彼女も、親戚の元を飛び出してきたというエピソードを言葉少なに語っている。
心優しく穏やかで、誰とでもソツなくやっていけそうな印象とは別の一面を覗かせることで、より深みが増す。
こんな風にさり気なく多面的な性格を映すところが、時代が違っても、成瀬監督の描くキャラクターに親近感を覚える所以かしら。
ゆいこ

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