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暗殺の森のtorumanのレビュー・感想・評価

暗殺の森(1970年製作の映画)
4.5
イタリア映画界の巨匠ベルナルド・ベルトリッチ29歳の衝撃的傑作。
午前十時の映画祭にて、初めてスクリーン鑑賞です。

少年期の性体験のトラウマより、マイノリティになる恐れを抱き、"普通"の人間である事にこだわったマルチェロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)はイタリア全土を覆っていたファシストの黒服隊に入隊。
かつての恩師の暗殺を請け負う…

マルチェロは全ての事柄からはみ出る事を恐れ、"何もしない男"として描かれます。
反対にマルチェロの婚約者ジュリア(ステファニア・サンドレッリ)と恩師の若き妻アンナ(ドミニク・サンダ)の当時タブーである同性愛を感じさせなる自由な関係。
この2つのコントラストが、終始マルチェロのアイデンティティを揺り動かしていきます。

この作品の最大の魅力は、ビットリオ・ストラーロ撮影監督の見事な映像です。

特に別荘でのダンスのシークエンスは、映画史上残る名シーンです。
2人の官能的なタンゴから、会場の人間が大きな輪となり、やがて会場から外にまで広がるダンスに至るまで、素晴らしいダイナミズムです。

他にも
・電車の車窓の夕焼けから青への息を呑む変化
・現在と過去の色合いで区別した色彩設計
・森から現れるファシストのクールで不気味な表現
・買い物の様子を横移動と青い照明で描いたロマンティックな映像
全ての映像が素晴らしくて…

現代と過去の重曹的な構成と魅惑的な映像で何回も繰り返し観ており、その都度色々な考察が生まれる作品です。

ファシストの嵐が去り、トラウマの根拠の崩壊により、マルチェロはどう生きていくのでしょうか?
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