このレビューはネタバレを含みます
「どの犬も人間が躾けてくれるのを待っている」「どんな犬を望んでいるのか私達が決めること」
3人の子供達
海・高速道路・遠足・カービン銃
ギリシャ郊外の豪勢な住宅
独裁者である父親に幽閉される家族
夫にマゾヒズム的従順さを見せる母親
今ある環境を当たり前かのように受け入れる子供たち
正装をして夕食の場につく家族
広い庭で遊ぶ子供たち
父親が追い求める完璧な家庭が少しずつ崩れる音をたてる
「犬歯」
父親は、家族の思い出のビデオを流し、fly to the moonに甚だしい誤訳をつけ、家族愛を確かめさせる。踊るのに疲れた妹に「無理せず休みなさい」と声をかける。
彼は彼なりの歪んだ信念をもって、家族を躾け、守ろうとしているのだと思わされる。しかしやはり、それは愛情と呼ぶにはほど遠く、犯罪的に歪曲しており、許されるべきでは決してない。
人間は、自由に考え、感じ、意志を持つことができる。
最後、姉は一歩踏み出す決断をしたと信じたい。
映画鑑賞中も観賞後も、ヨルゴス・ランティモス監督作品特有の、「居心地の悪さ」を感じた。
私は誤った常識の上に立っていないだろうか、自ら考えることを辞めていないだろうか、諦めによる従順さに慣れてしまっていないだろうか、私の誤った価値観を他人に植え付けていないだろうか。
そんなことを考えさせられた。