スワヒリ亭こゆう

続・男はつらいよのスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

続・男はつらいよ(1969年製作の映画)
4.0
先日、僕の父が亡くなったんです。
父は生前『男はつらいよ』が大好きでした。
父の弔いも兼ねて『男はつらいよ』シリーズを観る事で供養になれば良いし、もしかしたら側に来て、一緒に観てるかもしれないなぁと思いながら観賞しました。

昭和の男だった父と『男はつらいよ』の昭和風情が合わさって凄く感傷に沁みました。
お馴染みのタイトルが映り、音楽が流れる。
一番の歌詞が『男はつらいよ』の全てですよね。
偉い兄貴になりたくて奮闘努力っていうのが面白いんですよね。
フーテンの寅さんって、生き方に粋を感じる。
女にモテないけれども人間性が愛される。
みんなを笑わせようとする時も一生懸命。
恋も一途。だから面白いんですね。
啖呵売の寅さんも面白いんだけど、実はフリなんですよ。冗談ばっかり言ってる寅さんが好きな女性の前では真面目に振る舞って見栄を張ってる。
あとでフラれるのを分かってるから、こっちは可笑しくて仕方がない。
終盤にヒロインには意中の相手がいる事が分かり、ショックを受けて放心状態になってる寅さんが面白くて仕方がない。
泣いてるのを見て笑われる。
芸人は笑われるんじゃなくて笑わせるんだ!っていう事を言う芸人がいますけどね。
寅さんはその上いってて、笑われるのを見込んでますよね。
寅さんが好きな女性に一生懸命やってフラれて笑われる訳です。一生懸命に夢中になればなるほど面白い。それを分かってるから渥美清さんという芸人の凄さなんですよね。

今日は何だか目頭が熱くなる『男はつらいよ』でしたが、思い出深い作品にもなりました。
親戚が集まった葬式なんかじゃあ、寅さんの様に一人でみんなから笑いをとっていた親父。
湿っぽいのは性に合わないから、笑いに溢れた『男はつらいよ』が僕の心情にはピッタリでした。