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奇跡のTSのレビュー・感想・評価

奇跡(1954年製作の映画)
4.0
【とある一家におこる奇跡】85点
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監督:カール・テオドア・ドライヤー
製作国:デンマーク/ベルギー
ジャンル:ドラマ
収録時間:126分
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平均スコアが驚異の4.3。『裁かるるジャンヌ』と並ぶカール・テオドア・ドライヤーの代表作らしく、三枚組のブルーレイboxを購入し鑑賞。たしかに納得の完成度。白黒での映像の美麗さでいうと今まで見てきた作品の中でもトップクラス。今作でもキリスト教が鍵となってくるため、ドライヤーの作品に宗教という要素は外せないようです。

1930年代、デンマークのとある田舎町。農場を営むボーエン家にまつわる話であり、家長のモルテンは厳格な人物、長男のミケルは信仰心が薄く、次男のヨハネスは勉強をしすぎたあまり自分がイエスであるのだと錯覚をし、三男のアーナスは宗派の違う家の娘に恋をしているというものだったが。。

物語は淡々と進んでいくため、合わない人もいると思いますが、今作では自分をイエスと錯覚して、まわりも呆れるほどの独り言を言っていくヨハネスがいるから、冒頭から凝視できてしまいます。過去の記憶もほぼなくなり、ただただ先導者が発しそうな言葉を家族に言い散らかす。正直いうと迷惑以外の何物でもないでしょう。ごくたまに都市部などでそのような人を見かける時もありますが、一体彼等に何があったのかと思い返してしまいますね。宗教の神秘性、脅威性を感じてしまいます。

さて、そんな中長男モルテンの妻であるインガーが出産を控えるのですが容体が急変します。一度はおさまったものの、そこにあらわれるヨハネスは縁起悪くも「死神が大鎌をもちインガーのところに向かって来た」と伝えます。普通で考えると失礼極まりない言動です。今作のタイトルは奇跡であり、それはラストシーンにおこるのですが、何の奇跡なのか?

とにかく映像が美麗であり、一人一人の表情が具に表現されています。また、様々な人がいる中、宗教への信仰心がクローズアップされている作品ともいえそうです。うまく言葉で言い表せられませんが、なるほど名作だと思わされました。
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