BON

青いエプロンのBONのレビュー・感想・評価

青いエプロン(1965年製作の映画)
4.2
震えるように美しく、涙が出るほど心が痛い、現代にこそ鳴り響くティールロヴァーの警鐘。

チェコの詩人であり作家でもあるヴァーツラフ・シュトゥルテクの小説を原作とした夢のような、心象風景のような、絵画の中のような寓話詩。

自由への憧れと自由を勝ち取るための戦い。平和と純粋無垢の象徴であるかのような白いシェルボタンのついたベビーブルーのエプロンと、紙飛行機の小鳥が自由を求め空をさすらう物語。

舞台は兵器と鉄の塊が蠢き、汚染された終末的世界。発射された兵器が邪悪で黒いとぐろを巻き、純真な彼らを追い回す。風車、聖母子像、桜の雲に隠れて逃げるエプロンと小鳥。

結局邪悪な何かに飲み込まれ、サイケデリックで禍々しい戦争のイメージが目まぐるしく流れ出し、紙飛行機の小鳥はついに焼け落ちてしまう。

エプロンは空を壊して何かを閉じ込めるが穴が開いてしまっている。エプロンは自分の身をヒビに貼り付け、やがて空色の身体は空に溶け込み、貝殻の白いボタンは夜空に光る月となった…。

背景のテンペラのような暖色系や寒色系の舞台が特に素晴らしく、バックに浮かぶ紙でできた桜の雲はゴッホの「花咲くアーモンドの木の枝」を彷彿させる。類まれなカラーバランス。酔った。
BON

BON